懸念される中国経済の日本化

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2015年11月25日

  • 小林 卓典

サマリー

減速が続く中国経済は、安定性をある程度取り戻したように見える。過去1年間で3270億ドル減少した外貨準備は、10月は前月比で6か月ぶりの増加に転じた。人民銀行が8月に人民元の対ドルレートを切り下げたため、追加切り下げへの憶測から資本流出が加速したが、その動きはいったん収まったようだ。不動産価格は一進一退ながら大都市を中心に底入れし、全面的な不動産市場の調整は回避されている。ただし、中国経済が回復するには、金融緩和とともに人民元の切り下げを行い、製造業の生産を梃入れする必要があるだろう。低下する製造業の名目付加価値(GDPベース)の伸びは、7-9月期はついに前年比マイナス0.2%と、二桁成長が当たり前だった数年前とは様変わりの状況となっている。これは生産活動の停滞により過剰生産能力が顕在化し、製品価格の下落が加速しているためである。強い人民元とデフレの組み合わせは、中国の景気回復を阻害すると同時に、土地バブル崩壊後の日本の経験とも重なるところがあり、中国経済の日本化が懸念される。

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