サマリー
◆中国経済の消費堅調、投資減速、相対的に大きな輸入減少(貿易黒字拡大)という基本的な構図に変化はない。ただし、2015年10月の実質小売売上は前年同月比11.0%増と2ヵ月連続で伸びが加速し、1月~10月の固定資産投資は前年同期比10.2%増と1月~9月の同10.3%増からは0.1%ポイントの鈍化にとどまるなど、景気下げ止まりの兆しも見えてきた。
◆2016年に始まる第13次5ヵ年計画期間中は平均6.5%以上の経済成長が強く意識されている。ニューノーマル(新常態)における高速成長から中高速成長への移行とは、かつての10%成長から6%~7%程度へ成長率が低下することであり、ヒアリング先の政府系シンクタンクには、足元の成長率(2015年1月~9月は前年同期比6.9%)が低いとの認識はない。今後の経済政策運営については、「高度成長期のマイナス点(環境汚染、投資過剰・融資過剰など)を最小限にとどめることが重要」、「景気減速のスピードをより緩やかにしていくこと、イノベーションによって経済を活性化させていくこと、社会安定化のためのセーフティネットを構築していくことの3つが鍵となる」との指摘があった。彼らは、リーマン・ショック後の4兆元の景気対策のような大規模な政策発動の必要性を全く感じていなかった。
◆第13次5ヵ年計画では、今後の発展理念として、①イノベーション、②協調(調和)、③グリーン(環境・エコ)、④開放、⑤共享(共に享受する=成果を人々が分かち合う)、の5つが提示された。特徴的なのは、筆頭にイノベーションが掲げられたことである。2006年以降の最低賃金大幅引き上げを契機に中国の労働コストの上昇は加速し、持続的な元高も労働集約的産業・製品の競争力を低下させた。一帯一路(海と陸のシルクロード)構想は、競争力を失った産業・企業の海外移転を推進する側面を持つ。自国に残った産業をアップグレードしなければ、空洞化は避けられない。イノベーションの重要性は指摘されて久しいが、その実行の真剣度は大きく増そうとしているのかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日