サマリー
◆ユーロ圏の7-9月期のGDP成長率は前期比+0.3%と発表され、10四半期連続のプラス成長となった。主要4カ国の成長率はドイツが同+0.3%、フランスが同+0.3%、イタリアが同+0.2%、スペインが同+0.8%とそろってプラス成長である。なお、ユーロ圏の7-9月期GDPの需要項目別内訳は未発表だが、個人消費と政府消費が引き続き牽引役となった一方、投資は伸び悩み、純輸出寄与度はマイナスに転じたと推測される。
◆新興国の景気の持ち直しが遅れている中で、ユーロ圏経済は内需への依存が高い状況が今後も継続しよう。ただし、難民急増問題、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題が雇用不安を想起させていたところに、11月13日のパリ連続テロ事件が起き、さらなる消費者マインドの悪化要因となることが懸念される。また、ユーロ圏の10月の消費者物価上昇率は前年比+0.1%と引き続き低水準で、原油を筆頭とする商品価格が低迷していることを勘案すると、年末から緩やかに上昇するというECBのシナリオの実現性はますます低下している。ECBは次の12月3日の金融政策理事会で追加の金融緩和に踏み切ると予想される。その内容は、中央銀行預金金利の引き下げに加えて、資産買取プログラムの期間延長となると予想される。
◆英国の7-9月期のGDP成長率は前期比+0.5%と発表され、4-6月期の同+0.7%から減速した。需要項目別の内訳は未発表だが、ユーロ圏同様、消費は堅調な一方、投資と輸出が振るわなかったと推測される。雇用改善と低インフレを追い風に家計の実質所得が伸びていることが、今後も消費拡大を下支えすると予想するが、英国の経済成長率は2014年の+2.9%から2015年と2016年は+2%台前半に減速すると予想される。なお、10月の消費者物価上昇率は前年比-0.1%と9月に続いてマイナス圏にとどまった。原油価格下落、ポンド高というインフレ抑制要因が想定以上に長期的な影響を及ぼす可能性が高まっている中で、英中銀(BOE)は消費者物価は2016年後半まで前年比+1%を下回ると見通しを下方修正した。今後2年で同2%のターゲットを達成するとの見通しは変更していないが、利上げ開始時期が一段と後ずれする可能性が高まっている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日