サマリー
世界金融危機後、主要国の中央銀行は膨大なマネタリーベースの供給を行ってきた。これによって米国は利上げまでもう一歩のところまで景気を回復させ、ユーロ圏はデフレ回避に、日本はデフレ脱却に一定の成果を収めてきた。ただ依然として新興国を含む主要国の経済成長率の見通しは下方修正が続き、多くの国で目標とする経済成長率の実現が逃げ水のように遠ざかる状況が続いている。金融緩和は強力な効果を持つとはいえ、それにも限界があり、経済成長の再加速には力不足であるとの印象は否めない。しかし、主要先進国では緊縮財政が続き、構造改革も政治的な要因を背景に進展が容易ではないとすれば、各国とも金融緩和に依存せざるを得ず、FRBが9月に利上げを見送ったことは、世界経済の現状を考えれば妥当な選択であったといえる。米国の利上げが新興国に影響を及ぼすことは不可避であり、また中国経済の減速が構造改革を必要とする根の深い問題であるという点で、FRBにとって利上げ判断を巡る不確実性はそう簡単に消え去るものではないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
景気減速が続く中国、市場制御の難しさ
2015年09月18日
-
欧州経済見通し 景況感悪化の材料が増加
中国景気懸念に加え、フォルクスワーゲンの信用失墜
2015年09月24日
-
米国経済見通し 利上げ可能との認識
金融市場の混乱などで萎縮したマインドの影響が留意点
2015年09月24日
-
日本経済見通し:「踊り場」か?「景気後退」か?
日本経済は「踊り場」でとどまる見通しだが「景気後退」のリスクも
2015年09月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年10月貿易統計
トランプ関税の悪影響が継続。今後は米中リスクにも警戒が必要
2025年11月21日
-
2025年10月全国消費者物価
サービス価格や耐久消費財価格の上昇が物価上昇率を押し上げ
2025年11月21日
-
中国の渡航自粛要請は日本の実質GDPを0.1~0.4%下押し
今後は対中輸出などへの波及に要注意
2025年11月21日

