景気減速が続く中国、市場制御の難しさ

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2015年09月18日

サマリー

◆人民元切り下げ3日目に中国人民銀行は、これ以上の元安は望まない旨を明言した。景気減速などを背景に元安に振れようとする為替市場に対して、それを抑えたい中国人民銀行は元買い介入でこれに対応し、為替介入資金はかつてない規模となったと見られる。外国為替資金残高の減少に対して、当局が何もしなければ金融引き締めとなる。このため、中国人民銀行はオペなどを通じて金融システムに流動性を供給しているが、長期的な資金の供給手段としては、預金準備率の引き下げが効果的である。9月6日以降の大手行の預金準備率は18.0%と高水準であり、引き下げ余地は大きく残されている。


◆なりふり構わない株価対策は水泡に帰した。株価下落のマイナスの影響を相殺する景気対策強化の重要度が増しており、8月下旬以降、中国政府は、(1)住宅市場のさらなるテコ入れ、(2)地方政府債務の低金利・中長期の地方債への置き換え増額、(3)固定資産投資の最低資本要求引き下げによるインフラ投資のさらなる増強、といった措置を相次いで発表した。


◆消費は底堅さを維持しているが、豚肉価格急上昇による物価上昇が実質消費に与える影響が今後の気がかり。1月~8月の固定資産投資は一段と減速した。春以降、住宅販売は回復傾向を強めており、これがこれまで急減速してきた不動産開発投資の底入れ・改善につながるかが、景気底打ちの鍵を握る。


◆8月までの主要経済指標は中国経済が引き続き減速し、7月~9月の実質GDP成長率は7%割れとなる可能性が高いことを示唆している。中国政府は、2015年の政府成長率目標7.0%前後に対して、6.8%程度までの下振れを容認しようとしているとみられる。この着地点を目指すための追加金融緩和やある程度の財政政策の強化はあっても、一部で期待されている、かつての4兆元の景気刺激策のような大規模な対策は想定されない。

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