サマリー
◆ユーロ圏の4-6月期のGDP成長率は前期比+0.3%から同+0.4%に上方修正された。固定資本形成と在庫変動が成長率に対してマイナス寄与に転じたが、個人消費、政府消費、輸出は引き続きプラス寄与となった。ユーロ圏の企業と消費者の景況感は、7月以降もギリシャを除けば概ね強気水準にあり、緩やかな景気回復が継続していることが示唆されている。
◆ただ、ここ1カ月は景気回復の阻害要因となり得る材料が増えてしまった。中国景気に対する懸念がまだ消えず、デフレ懸念もくすぶるところに、9月半ばにフォルクスワーゲンの排ガス規制逃れが発覚した。基幹産業である自動車産業の最大手メーカーの不正だけに、その悪影響が広範囲に及ぶ可能性が否定できない。ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、「現時点で追加の金融緩和措置を考えるのは時期尚早」と欧州議会で証言したが、ユーロ圏の景気には下振れリスクがあり、低インフレ状態が長期化する可能性が高まっていることは十分に認識していると見受けられる。実際に景気が下振れとなれば、「2016年9月まで」としている資産買取の期限の延長を決定すると予想される。
◆さらに、欧州はシリアなどからの大量の難民流入にどう対処するかという問題に直面している。ドイツでは難民流入は労働力不足の解決策の一つになるとの前向きな意見もあるが、そのためには語学教育、職業訓練、就職斡旋などのサポートがまず必要である。
◆英国の4-6月期のGDP成長率は前期比+0.7%に加速した。足下で失業率は5.5%に低下した一方、賃金上昇率が一段と加速し、利上げ開始に向けた環境が整いつつあるように見受けられる。ところが、消費者物価上昇率は8月に前年比0.0%に低下してしまい、また企業景況感にも悪化の兆しが見られる。BOE(英中銀)は海外経済の見通しが不透明であること、インフレ圧力が高まっていないことを理由に金融政策を当面据え置く方針を維持しており、利上げ開始時期は2016年4-6月期を予想している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日