サマリー
本稿では、国内の個人消費を牽引する高齢者世帯の消費が、どのように決まるのかを他の年齢階級と比較することで明らかにする。また、主な収入が年金である高齢無職世帯の消費の特徴を捉え、年金の実質的な減額が消費抑制へつながるのかを確認したい。
勤労世帯と異なり、高齢無職世帯の消費は所得を大幅に上回っており、交際費やパック旅行等の選択的支出の割合が比較的多い。近年は勤労世帯が食費を切り詰めているのに対し、高齢無職世帯ではあまり変化がない。その原資は貯蓄取り崩しであり、資産を持つ高齢者世帯の割合は増加している。
定年退職後の長い高齢期(健康寿命と比較しても定年年齢は早期に設定されている)の消費については、低貯蓄・低収入世帯を除き、公的年金給付だけでなく、貯蓄取り崩しや就労によってヘッジしていくことが望ましいと思われる。そのため、特に高齢者の就労を促すには生産性に応じた雇用体系へ移行すべきであろう。
一方で、就労が困難な後期高齢者や低貯蓄・低収入世帯においては年金を重点的に給付するような制度のあり方が検討できよう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
最新データで見るテレワークの定着と進化
ハイブリッド型勤務が信頼・柔軟性・生産性のバランスの最適解?
2025年07月30日
-
AIとビッグデータ分析、社会科学の新潮流
国際学会に見るESG・ジェンダー・SNS研究の最前線
2025年07月30日
-
企業はAI利活用でDXの教訓を活かせるか
AI-Readyを再考し、戦略的な環境整備と企業変革の方向性を考える
2025年07月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日