法人税率引き下げと日本経済

~税率引き下げの効果を期待できる政策体系が重要~『大和総研調査季報』 2014年夏季号(Vol.15)掲載

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2014年09月01日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • リサーチ本部 執行役員 リサーチ担当 鈴木 準

サマリー

日本の法人実効税率は諸外国と比べて高い状況にある。法人税率の引き下げは企業の立地選択や国内設備投資に好影響を与えよう。本稿の分析によると、日本の法人実効税率が1%pt引き下げられた場合、対外直接投資が2.9%抑制され、対内直接投資は3.5%拡大する。また、法人税率を10%pt引き下げるシミュレーションでは、設備投資の水準は2.5%程度上回り、実質GDPが0.3%強上積みされる結果を得た。


もっとも、既存の経済構造の下では、税率引き下げ単独の効果は大きいとは言えない。減税の効果が十分に発揮されるには、制度・規制改革やコーポレート・ガバナンスの強化等が必要であり、これらの実施を想定した“構造変化シナリオ”では、実質GDPを1%台半ば強押し上げる可能性も見えてくる。また、短期的には財政負担の小さい投資減税を優先させるという戦略も検討に値する。


もう一点、法人税率の引き下げの効果を最大限に得るためには財政健全化も無視できない。税率引き下げを行うに際しては、課税ベースの見直しや他の税目の改革、歳出削減などの検討が極めて重要と考えられ、2020年の財政健全化目標達成への道筋が見えてくるような税制改革論議が期待される。


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