サマリー
日本の法人実効税率は諸外国と比べて高い状況にある。法人税率の引き下げは企業の立地選択や国内設備投資に好影響を与えよう。本稿の分析によると、日本の法人実効税率が1%pt引き下げられた場合、対外直接投資が2.9%抑制され、対内直接投資は3.5%拡大する。また、法人税率を10%pt引き下げるシミュレーションでは、設備投資の水準は2.5%程度上回り、実質GDPが0.3%強上積みされる結果を得た。
もっとも、既存の経済構造の下では、税率引き下げ単独の効果は大きいとは言えない。減税の効果が十分に発揮されるには、制度・規制改革やコーポレート・ガバナンスの強化等が必要であり、これらの実施を想定した“構造変化シナリオ”では、実質GDPを1%台半ば強押し上げる可能性も見えてくる。また、短期的には財政負担の小さい投資減税を優先させるという戦略も検討に値する。
もう一点、法人税率の引き下げの効果を最大限に得るためには財政健全化も無視できない。税率引き下げを行うに際しては、課税ベースの見直しや他の税目の改革、歳出削減などの検討が極めて重要と考えられ、2020年の財政健全化目標達成への道筋が見えてくるような税制改革論議が期待される。
大和総研リサーチ本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日