サマリー
◆2013年の貿易収支は11.5兆円の赤字となり、比較可能な中で過去最大の赤字幅を記録した。本レポートは、その要因を分析するレポートの第1弾である。
◆原発が停止してから、火力発電への依存度は急速に高まり、液化天然ガス(LNG)の輸入量が急増した。さらに、LNG調達の急増は、スポット取引の増加を通じてLNG価格を上昇させることになった。仮に原発が停止していなければ、鉱物性燃料輸入量は10%程度少なく、LNG輸入価格は20~30%程度低かった可能性がある。結果として、原発が停止していなければ、輸入金額は4兆円程度少なかったと考えられる。これは裏を返せば、原発が再稼働しても、貿易収支赤字幅は4兆円程度しか縮小しないということを意味する。
◆貿易収支赤字幅の拡大には空洞化の影響が大きく、円安によるJカーブ効果の発現に時間がかかっていることも影響している(空洞化、円安が貿易収支に与える影響については、貿易収支赤字の要因②、③で分析しているため、そちらも合わせてご参照いただきたい)。しかし、原発停止、空洞化、円安の影響をすべて取り除けば、2013年の貿易収支は2兆円程度の黒字になっていた可能性がある。すなわち、貿易収支が赤字のまま推移するか、それとも黒字に復していくかは、今後の日本経済の動向次第なのである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
- 
                                    
                                          
経常収支の先行きをどう見るか
第一次所得収支黒字幅の拡大を主因として経常収支は黒字幅拡大へ
2014年04月04日
 - 
                                    
                                          
貿易収支赤字の要因③~円安効果、Jカーブ効果の現状
円安による輸出押し上げ効果は徐々に生じ始めている
2014年03月12日
 - 
                                    
                                          
貿易収支赤字の要因②~空洞化が赤字拡大の主因
空洞化の影響で貿易収支赤字は7兆円程度拡大
2014年03月11日
 
同じカテゴリの最新レポート
- 
                
                
                
                    
2025年9月鉱工業生産
生産用機械工業などの増産で上昇も、先行きは軟調な推移を見込む
2025年10月31日
 - 
                
                
                
                    
2025年9月雇用統計
失業率は前月から横ばいも、労働参加と就業拡大が進展
2025年10月31日
 - 
                
                
                
                    
2025年7-9月期GDP(1次速報)予測~前期比年率▲2.8%を予想
トランプ関税や前期からの反動減で6四半期ぶりのマイナス成長か
2025年10月31日
 
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
                                
                                    
                                      - 
                                              
                                          
第226回日本経済予測(改訂版)
                                          低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
                                          
                                            2025年09月08日
                                          
                                       
                                      - 
                                              
                                          
聖域なきスタンダード市場改革議論
                                          上場維持基準などの見直しにも言及
                                          
                                            2025年09月22日
                                          
                                       
                                      - 
                                              
                                          
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
                                          金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
                                          
                                            2025年09月01日
                                          
                                       
                                      - 
                                              
                                          
日本経済見通し:2025年9月
                                          トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
                                          
                                            2025年09月25日
                                          
                                       
                                      - 
                                              
                                          
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
                                          25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
                                          
                                            2025年01月23日
                                          
                                       
                                
                        
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

