サマリー
◆2013年の経常収支黒字幅が過去最小となったこと、足下で季節調整済みの経常収支が過去最大の赤字幅を記録したことで、経常収支赤字が定着するのではないかという声が多く聞かれるようになった。
◆第一次所得収支は、世界一の対外純資産を背景に黒字幅の拡大が続いている。なかでも、証券投資収益配当金や直接投資収益出資所得など、エクイティ性の強いものの割合が高まっている。海外M&Aの増加などが背景にあると考えられ、こうした動きは第一次所得収支のさらなる拡大につながるとみられる。
◆サービス収支は、製造業の海外進出に伴うライセンス料受取の増加と、訪日外国人旅行者数の増加によって、赤字幅は縮小傾向にある。今後も、こうした傾向は継続が予想されるため、サービス収支赤字幅は徐々に縮小し、黒字化も視野に入るだろう。
◆第一次所得収支は黒字幅の拡大が続いており、サービス収支は赤字幅の縮小傾向が継続している。先行きに関しても、こうした傾向は変わらないと考えられるため、貿易外収支は黒字幅を拡大していく公算が大きい。貿易収支についても、赤字幅を縮小していく可能性が高いと考えているが、もし貿易収支赤字幅が現状レベルで推移したとしても、貿易外収支の黒字幅は拡大が続くため、経常収支の赤字が定着するというような事態にはならないだろう。
◆日本銀行、財務省は2014年1月分統計の公表から、国際収支の作成基準をIMF国際収支マニュアル第5版(BPM5)から第6版(BPM6)へと切り替えた。統計の見直しによって、貿易収支赤字幅は縮小し、サービス収支は赤字幅が拡大した。所得収支は第一次所得収支という名称に変更され、再投資収益の計上時期の変更により、数値が一部改定された。資本収支は外貨準備増減と統合されて金融収支という項目に再編成され、海外純資産が増加した際にはプラス、減少した際にはマイナスで計上されるようになった。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
貿易収支赤字の要因③~円安効果、Jカーブ効果の現状
円安による輸出押し上げ効果は徐々に生じ始めている
2014年03月12日
-
貿易収支赤字の要因②~空洞化が赤字拡大の主因
空洞化の影響で貿易収支赤字は7兆円程度拡大
2014年03月11日
-
貿易収支赤字の要因①~原発停止で4兆円赤字拡大
原発停止は2013年のエネルギー輸入金額を4兆円程度押し上げ
2014年03月10日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年5月全国消費者物価
米価格の上昇が他の食料品や外食など関連品目の価格にも波及
2025年06月20日
-
2025年5月貿易統計
輸出数量は横ばい圏を維持も、円高効果等で輸出額は8カ月ぶりに減少
2025年06月18日
-
2025年4月機械受注
民需(船電除く)は減少し、コンセンサス通りの結果だった
2025年06月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日