サマリー
◆3月7日に行われたECB理事会では、4会合連続となる政策金利の据え置きが決定された。ラガルド総裁は、3月理事会では「利下げの議論はされなかった」としつつ、「引き締め的なスタンスを巻き戻すことを議論し始めた」と明言し、利下げ開始に向けた準備を始めたことを明らかにした。
◆ECBが注目する賃金、利益に関して、ラガルド総裁は「4月にはもう少し(a little more)、6月にはかなりの多く(a lot more)のことを知るだろう」と発言している。こうした発言を素直に受け取れば、4月会合以降に公表される賃金関連の統計を見極めた後、6月会合での利下げの開始が基本シナリオになろう。5月に公表が予定される、2024年1-3月期の妥結賃金が利下げ開始を判断する上での最終関門になるとみられる。
◆英国では、スナク政権が3月6日に、家計・企業向け支援策、公共サービスへの支出拡大を含む2024年度(2024年4月6日~2025年4月5日)予算を公表した。OBR(予算責任局)が公表した経済・財政見通しによれば、この財政措置によって、2024年度の実質GDP水準は0.27%pt押し上げられると試算されている。
◆金融政策面でもBOEの利下げへの転換に対する期待が徐々に高まりつつある。3月の金融政策委員会でベイリー総裁は「まだ金利を下げられる段階にはないが、状況は正しい方向に向かっている」とコメントし、利下げ開始に向け前進していることを示唆した。ただし、金融政策の変更の正当化に必要なインフレ沈静化の証拠の範囲に関して、メンバー内で意見が割れており、コンセンサスが得られるにはまだ時間が掛かる可能性がある。
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