サマリー
◆2023年のユーロ圏経済は1年間を通じて停滞が続いた。年前半の実質GDPはプラス成長となったものの、1-3月期、4-6月期とも前期比+0.1%と小幅な成長にとどまり、7-9月期にはマイナス成長に転じた。10-12月期も停滞が続いており、2四半期連続のマイナス成長となる可能性が高まっている。
◆ただし、景気回復に向けた好材料が増えつつある。最大の好材料は、これまでユーロ圏経済における最大の悩みの種であった高インフレ率が収束しつつあることである。減少が続いてきた実質賃金は、2024年は増加基調に転じるとみられ、横ばい圏で推移してきた個人消費は増加トレンドに復すると見込まれる。
◆また、インフレの沈静化は、これまで引き締めが続いてきた金融政策を緩和方向へと転換させる大きな要因となる。賃金の高止まりなどを理由に、ECBは今のところ利下げに慎重な姿勢を見せているが、2024年中には利下げへと舵を切ることになろう。大和総研では、2024年6月理事会での利下げ開始を予想する。
◆インフレの鈍化傾向は英国でも同様であり、BOEについても2024年は利下げへの転換が主な焦点となる。だが、英国のCPI上昇率は3%台後半と依然として高く、インフレ率の高止まりに対するBOEの警戒感は一層強い。政策金利を現行水準で維持する期間はECBよりも長引く公算が大きく、BOEの利下げ開始は2024年8月と見込む。
◆なお、英国では2024年内に実施が見込まれる総選挙が注目イベントとなる。足元の支持率に鑑みると、保守党から労働党への政権交代が起こる可能性が高い。短期的な経済見通しに与える影響は限定的とみられるが、拡張財政を志向する労働党への政権交代は、長期金利など金融市場に影響を及ぼす可能性がある。
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