サマリー
◆ユーロ圏、英国ともに2020年7-9月期の実質GDP成長は現行統計開始以来最大のプラス成長となった。もっとも、大幅増となったのは2020年上半期の2四半期連続の大幅な落ち込みからの反動増にすぎない。依然として7-9月期の実質GDPの水準は、リセッション入り前の2019年10-12月期の水準を下回っており、回復過程が道半ばであることを示している。
◆新型コロナウイルスの新規感染者が今春を上回るペースで急拡大していることから、欧州各国は感染拡大を抑制するために再び規制措置を強化している。特に、11月に入って、フランスやドイツ、英国、イタリアと、より厳格なロックダウン(都市封鎖)の導入に踏み切る例が増えている。一部で感染者のピークアウトが見られるものの、ロックダウンに伴う景気の下押し圧力から、10-12月期のマイナス成長は不可避となっている。景気のダブルディップ(二番底)が軽微にとどまるかは、ロックダウンの状況次第といえよう。
◆10月29日のECB理事会では現行の金融政策の枠組みを維持した。その一方で、ECBは、コロナ危機が再び強まっている状況を踏まえ、次回12月の会合で追加緩和の行動を取ることを異例の形で表明した。市場の期待が過剰に高まっており、中途半端な内容では大きな失望を招く恐れが出てこよう。
◆新型コロナウイルス感染拡大で景気の下押し圧力が高まっている中、英国とEUとの新たな将来関係を巡る協議は、移行期間終了まであと40日余りといよいよ期限が迫りつつある。
◆米国の大統領選挙の結果、民主党のバイデン候補が当選を確実にしている。欧州各国をはじめ世界の多くの国が一様に歓迎する姿勢である。バイデン次期大統領は、トランプ大統領が関係を悪化させた同盟国との関係修復や緊密な協力関係の構築に努めると期待されている。ただ、バイデン次期大統領は、国内の雇用重視、国内の競争力の立て直しを優先する方針を示しており、この点において、トランプ政権と大きな違いはないとみられる。従って、欧州サイドがバイデン次期大統領に過度に期待してしまうと、肩透かしを食らうかもしれない。
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