サマリー
◆ユーロ圏の1-3月期のGDP成長率は、前期比+0.5%と堅調な景気拡大が確認された。4月以降も企業と消費者の景況感は改善傾向にあり、金融危機後の景気回復は5年目に入った。オランダ議会選挙に続いてフランス大統領選挙でも反EU、反ユーロを掲げる候補者が退けられたことも、景況感の改善要因である。これまで景気回復を牽引してきた個人消費はインフレ加速を受けてやや減速しているが、代わって投資と輸出が伸びてきた。景気回復の足取りがしっかりしてきた中で、ECBの金融緩和スタンスがどう変化するか、6月8日のECB理事会が注目される。緩和解除に慎重な姿勢は変わらないものの、追加利下げの可能性に言及しているフォワード・ガイダンスを削除し、また来年以降の資産買取額の縮小等に関する検討を開始するのではないかと予想する。
◆一方、英国の1-3月期のGDP成長率は前期比+0.3%と10-12月期の同+0.7%から急減速した。消費関連のサービス業が振るわず、小売売上高が落ち込んでいることから、個人消費が景気減速の主因と推測される。失業率が1975年以来の水準に低下するなど雇用改善は進んでいるが、インフレ加速が実質賃金上昇率を大幅に鈍化させてしまった。インフレ加速の原因であるポンド安は昨年6月の英国のEU離脱(Brexit)決定が契機となっており、Brexit決定による景気悪化が投資手控えだけでなく、個人消費にもついに波及してきたと判断される。今後2年の英国の成長率は、過去4年と比較して減速すると見込まれる。なお、Brexitを実現するための英国とEUとの交渉は、6月8日の英国の下院議会選挙を経て、6月19日以降に開始される運びとなった。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日