世界景気拡大のすそ野の広がり

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2017年05月25日

  • 児玉 卓

サマリー

世界経済は安定感を増しつつある。米国ではトランプ政権の政策執行能力に対する疑念が着実に強まっているが、そもそも、同国は政策の支援を必要としない景気拡大局面にある。より重要なのは、ユーロ圏の景気拡大がより確固たるものとなってきていることである。これは第一に、米国依存の色彩が強かった世界経済の拡大のすそ野が広がってきていることを意味する。更に、景気循環的にユーロ圏が米国よりも「若い」とみられることも好材料である。ドイツなどは米国同様、あるいはそれ以上に完全雇用に近い状態にあり、供給制約が景気拡大持続のハードルとなる局面も遠くはないと考えられるが、ユーロ圏は構成国の経済状況がばらばらであることが、時に弱みであるが強みにもなり得る。イタリアやスペイン、フランスなどの失業率にはまだまだ低下余地がある。トータルとしての景気拡張余地が豊富だということである。米国景気の減速や後退が現実となった時、ユーロ圏を中心とした他国・地域が世界経済の下支え役を果たす蓋然性が高まっていると考えられよう。ただし新興国に関しては、「トランプ相場」終焉に伴うリスク・オン的な動きの後退、ユーロ圏経済堅調がもたらすECBの緩和修正への思惑など、過去半年ほどに比較すれば外部環境が吹かせる順風は弱まる可能性がある。

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