サマリー
世界経済は安定感を増しつつある。米国ではトランプ政権の政策執行能力に対する疑念が着実に強まっているが、そもそも、同国は政策の支援を必要としない景気拡大局面にある。より重要なのは、ユーロ圏の景気拡大がより確固たるものとなってきていることである。これは第一に、米国依存の色彩が強かった世界経済の拡大のすそ野が広がってきていることを意味する。更に、景気循環的にユーロ圏が米国よりも「若い」とみられることも好材料である。ドイツなどは米国同様、あるいはそれ以上に完全雇用に近い状態にあり、供給制約が景気拡大持続のハードルとなる局面も遠くはないと考えられるが、ユーロ圏は構成国の経済状況がばらばらであることが、時に弱みであるが強みにもなり得る。イタリアやスペイン、フランスなどの失業率にはまだまだ低下余地がある。トータルとしての景気拡張余地が豊富だということである。米国景気の減速や後退が現実となった時、ユーロ圏を中心とした他国・地域が世界経済の下支え役を果たす蓋然性が高まっていると考えられよう。ただし新興国に関しては、「トランプ相場」終焉に伴うリスク・オン的な動きの後退、ユーロ圏経済堅調がもたらすECBの緩和修正への思惑など、過去半年ほどに比較すれば外部環境が吹かせる順風は弱まる可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国経済の2018年問題
住宅価格下落と土地使用権売却収入の減少、地方債への置き換え一巡
2017年05月24日
-
欧州経済見通し ユーロ圏は内外需揃い踏み
政治リスクの霧が晴れ、見えたのは青空
2017年05月24日
-
米国経済見通し 揺れるトランプ政権
予算教書を漸く発表も、実現可能性は低い
2017年05月24日
-
日本経済見通し:2017年5月
2017年度にかけて成長加速、2018年度はバランスの取れた成長軌道へ
2017年05月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
日本が取り組むべきは「現役期」の格差是正
給付付き税額控除と所得税改革などで貧困層を支えよ
2025年08月25日
-
2025年7月全国消費者物価
単月で見れば弱めの結果も上昇基調は引き続き強い
2025年08月22日
-
2025年7月貿易統計
トランプ関税や半導体関連財の需要一服で輸出金額は3カ月連続の減少
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日