グローバル特集レポート 選挙と政治②

「左傾化」と「右傾化」が混在する欧州政治

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2015年12月25日

サマリー

◆2015年に実施された欧州各国の議会選挙では政権交代が目立った。その原因の一つは、金融危機とユーロ圏債務危機以降、各国が採用せざるを得なかった緊縮財政政策に対する不満の蓄積である。1月のギリシャ議会選挙では緊縮財政の撤回を主張する急進左派連合(SYRIZA)が初めて政権につき、10月のポルトガル議会選挙では中道右派政権に代わって左派の少数与党政権が誕生した。もっとも、欧州のすべての選挙で「左傾化」が生じたわけではない。


◆5月の英国議会選挙では、中道右派の保守党が過半数の議席を獲得して続投を決めた。一方、10月のポーランド議会選挙では、右派の「法と正義」が中道右派連合を破って政権を奪取した。また、12月に行われたフランスの地域圏議会選挙の第1回投票では、極右の国民戦線(FN)が全国集計した得票率で第1党に躍進して注目を浴びた。このような「右傾化」の背景には、移民や難民の流入急増に直面する中で、その排斥を主張する政治勢力が支持者を増やしている現実がある。


◆左傾化と右傾化ではベクトルは正反対だが、既成政党の政策に対する不満や不信感が蓄積する中で、国民が選挙をその不満を表明する機会と捉え、何らかの変化を求めて投票したと見受けられる。ただし、国民自身にもその「変化」の行きつく先が明確になっているわけではなく、それが端的に表れたのが12月20日のスペイン議会選挙と考えられる。与党の国民党(PP)が第1党の座は維持したものの、大きく議席数を減らし、他方で、最大野党の社会労働党(PSOE)も議席数を伸ばすことはできなかった。代わってポデモス、シウダダノスの2つの新興勢力が議席を獲得したが、それぞれ第3党、第4党にとどまった。欧州の政治情勢は2大政党制のような従来の形が崩れつつある一方、次の新しい形はまだ明確ではない。とはいえ、政策転換が左右に極端に振れる動きに対しては、それをとどめようとする力も働くように見受けられる。

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