サマリー
◆2024年のASEAN5の実質GDP成長率は、外需の回復と良好な内需を背景に、前年から加速する見通しである。この状況が続けば、ASEAN5の実質GDP成長率は2025年に、コロナ禍前5年(2015-19年)平均にまで届く見通しである。ただし、米国で1月に発足するトランプ政権による政策の影響次第では、下振れリスクに注意が必要である。
◆トランプ政権発足によるASEAN5への影響は、貿易と資本フローに表れやすい。本稿では、米国が中国に追加関税を実施した場合と、ASEANにも追加関税を実施した場合、「Made by China」への規制を強化した場合、グリーン補助金を停止した場合に分け、ASEAN5への影響をまとめた。通商政策の変更内容と厳格度によって、各国への影響は異なるが、追加関税が中国のみを対象とする場合、ASEAN5への悪影響は全体として限定的で、ベトナムのような国は、むしろ恩恵を受けやすいだろう。他方で、ASEAN5を含む中国以外の国に対しても追加関税が課される場合、ASEAN5への影響は全体としてネガティブとなる。
◆2025年は、米国の長期金利の上昇とインフレ圧力の高まりを背景に、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが鈍化すると予測されている。ASEAN5は、資本フローの動きと経済成長の両方に配慮しながら、金融政策を行う必要がある。その中でも特に、中国との貿易・投資関係が緊密で且つ、海外投資家の債券保有比率が高いインドネシアやマレーシアの資本フローに注意が必要となるだろう。特に、利下げ余地の大きいインドネシアでは、金融政策の舵取りが難しくなりやすいだろう。
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