サマリー
◆2024年9月22日から1週間、デリー・ベンガルール・ムンバイを訪れ、17社/機関を取材した。自動車・二輪車、家電、宝飾、消費、IT、REIT、インフラ、通信、証券セクターの企業のほか、大学教授との面談も行った。
◆2024年4、5月に行われた総選挙では、失業率の高さや貧困、物価高に対する不満を背景に、与党インド人民党の辛勝となった。大学教授との面談では、①地方の消費財の生産や、雇用を生み出してきた中小企業が、コロナ禍等で疲弊していることが原因で、地方で政府に対する不満が高まっている可能性や、②輸出セクターの育成による雇用機会の創出が必要である点を指摘する声があった。6月に連立政権が発足したことを契機に、モディ首相が地方の意見を聞く姿勢が窺え、トップダウンだった意思決定に変化が見え始めたことは、地方経済にとって良い兆候であるという意見もあった。
◆今後の期待セクターとしては、①自動車産業における、二輪車・CNG(圧縮天然ガス)車の普及、②道路・鉄道のほか、半導体やデータセンターなどのインフラ、③水素を中心とした再生可能エネルギー、④グローバル・ケイパビリティー・センター(GCC)が挙げられる。
◆インドで製造業が育ちにくい背景には、これまで雇用機会を創出してきた小規模工業を優遇し、企業の成長を阻害した過去の産業政策に起因する。今後は、外需を取り込む政策に転換することで、国内の裾野産業育成に中小企業を巻き込むなど、国の成長戦略における中小企業の位置づけを見直す必要がある。さらに、労働改正法の施行を急ぐことで、解雇を自由にできる範囲を広げ、雇用の流動性を高め、企業の固定費負担を軽減する体制の整備も必要だろう。第3次モディ政権の注目点は、そのような抜本的改革を打ち出せるか否かだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
-
トランプ関税のアジア新興国への影響と耐性は?
製品によって異なる影響。対外的な耐性は十分もインドネシアに注意
2025年04月16日
-
トランプ2.0、資源面でアジアに恩恵も
米国産LNGがエネルギー移行を促進・重要鉱物の代替供給地になるか
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日