インドネシアはフラジャイル国なのか

中央銀行とのミーティングを踏まえて

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2015年09月28日

サマリー

◆インドネシアは、「フラジャイル」とされる他の4か国と比較して、経常赤字や財政赤字の水準は低く、「フラジャイル国」として一括りにするのには一見抵抗がある。しかし、中国経済減速への市場の懸念や米国FRBによる利上げ観測が持ち上がるたびに、ルピアの売り圧力は高まる傾向にある。中銀との面談を踏まえ、国内外の政治経済情勢が目まぐるしく変化する中、インドネシア経済は本当に「フラジャイル」であるのかに焦点を当ててまとめたい。


◆自国通貨が売られやすい背景には、資源依存といったインドネシアの構造的な問題がある。いかに自国の競争力を高めていくかという課題に対し、新政権が打ち出した政策はインフラ整備を通した投資環境の改善である。燃料補助金削減はその資金確保のために実施され、歳入規模が限られる中にあっても、政府は財政赤字を拡大させずに成長分野への投資が可能となった。


◆これに対する評価は高く、新政権による構造改革への期待は一時高まった。しかしその後、新政権の実行能力に対する懐疑が期待を上回る傾向にある。政策方針と実際の政策運営実態の不一致が、対外的な信頼を損ね、インドネシアのリスク評価を悪化させている。これが、財政規律の維持、債務管理能力の強化といった、新政権のこれまでの取り組みをリスクにさらしている。


◆今後は、政策の一貫性欠如の払拭が課題である。中銀との面談によると、政策側はすでにその意識を持っているようだ。ここ数か月の間に発表された政策をみると、これまで散見されたポピュリズムに傾倒した政策から、本格的な構造改革に乗り出した兆候がある。今回の改革で対外的な評価を高めることができなければ、インドネシアがファンダメンタルズ以上に「フラジャイル」と見続けられることは必至であり、まさに正念場といえる。

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