サマリー
◆10月5日から12日にかけてフィリピン、ベトナム、カンボジアを訪れる機会を得た。本レポートではフィリピンとベトナム経済の動向に関するトピックを中心に議論を進める。
◆フィリピン経済は外資系企業による投資が拡大する期待が持てた。フィリピンでは中卒・高卒レベルの労働者を確保することは比較的容易な上に、賃金上昇率・離職率は低く、ストライキ数も極めて少ない。さらに英語に堪能な労働者が多いため、外資系企業の駐在員ともコミュニケーションが取りやすい。また、今回訪問したフィリピン経済特区庁(PEZA)も輸出企業に対して良好な投資環境を提供している。しかし、中長期的に安定成長を続ける上では多くの問題を抱えている。インフラ整備が不十分な点はもちろん、雇用不足と高い貧困率は今後の消費拡大の重石となろう。また、フィリピン政府が外資系企業の誘致や海外への出稼ぎに力を入れすぎた結果、国内産業の育成が疎かになるリスクも考えられる。
◆ここ数年間低迷していたベトナム経済は底入れが確認できた。しかし、構造面での課題は多く残されている。この代表例は制度の実施状況や企業の財務状況の不透明性である。また現地のヒアリングではワーカーの確保も難しくなったという指摘もあり、今後ベトナム産業の国際競争力が低下するリスクとして、労働市場が逼迫して賃金が急上昇する点も認識すべきであろう。
◆メコン川の両岸をまたぐネアックルン橋の工事は相当進んでおり、2015年3月までには完成する可能性は相当高いと思った。これによって南部経済回廊の利便性は相当増すとみられる。しかし、今後これらの地域に自動車が普及すれば、特に1車線のカンボジア側の道路では渋滞が頻発する可能性がある。そのため、高速道路の早期建設が求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日