フィリピン・ベトナム経済の光と影

現地視察報告

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2014年10月24日

サマリー

◆10月5日から12日にかけてフィリピン、ベトナム、カンボジアを訪れる機会を得た。本レポートではフィリピンとベトナム経済の動向に関するトピックを中心に議論を進める。


◆フィリピン経済は外資系企業による投資が拡大する期待が持てた。フィリピンでは中卒・高卒レベルの労働者を確保することは比較的容易な上に、賃金上昇率・離職率は低く、ストライキ数も極めて少ない。さらに英語に堪能な労働者が多いため、外資系企業の駐在員ともコミュニケーションが取りやすい。また、今回訪問したフィリピン経済特区庁(PEZA)も輸出企業に対して良好な投資環境を提供している。しかし、中長期的に安定成長を続ける上では多くの問題を抱えている。インフラ整備が不十分な点はもちろん、雇用不足と高い貧困率は今後の消費拡大の重石となろう。また、フィリピン政府が外資系企業の誘致や海外への出稼ぎに力を入れすぎた結果、国内産業の育成が疎かになるリスクも考えられる。


◆ここ数年間低迷していたベトナム経済は底入れが確認できた。しかし、構造面での課題は多く残されている。この代表例は制度の実施状況や企業の財務状況の不透明性である。また現地のヒアリングではワーカーの確保も難しくなったという指摘もあり、今後ベトナム産業の国際競争力が低下するリスクとして、労働市場が逼迫して賃金が急上昇する点も認識すべきであろう。


◆メコン川の両岸をまたぐネアックルン橋の工事は相当進んでおり、2015年3月までには完成する可能性は相当高いと思った。これによって南部経済回廊の利便性は相当増すとみられる。しかし、今後これらの地域に自動車が普及すれば、特に1車線のカンボジア側の道路では渋滞が頻発する可能性がある。そのため、高速道路の早期建設が求められる。

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