サマリー
◆中国の卸売物価が大きく上昇している。今後、生産財の川下分野、そして生活財への価格転嫁が進めば、最終的には消費者物価の大幅な上昇が懸念されるが、その可能性は低い。中国では加工工業品や生活財分野の価格競争は厳しく、消費者に近い分野ほど、価格転嫁の動きは部分的にとどまる可能性が高い。一方、価格転嫁が進まなければ、コスト増加によって企業業績は悪化を余儀なくされ、企業の業績悪化⇒所得の伸び悩み⇒消費の抑制が懸念される。この点で、中国政府による投機抑制策や国家備蓄放出などコモディティ価格抑制策が奏功するかどうかが、当面の注目材料となろう。
◆中国国家統計局によると、2021年1月~5月の固定資産投資は、コロナ禍以前の2019年1月~5月との比較で、8.5%増(1月~4月の同比較は8.0%増)、同様に小売売上は8.8%増(同8.6%増)となり、内需はやや加速している。5月の輸出については、マスク・防護服など紡織品や、医療機器・器械が前年同月比で2桁の減少となるなど、これまでの好調の主因であった「コロナ特需」の剥落が輸出の足を引っ張るようになっている。それでも輸出が3割近く伸びたのは、世界需要の回復によるところが大きい。中国経済見通しに変更はなく、2021年は前年比8.8%程度、2022年は同6.0%程度の実質成長を遂げよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日