サマリー
◆2016年2月以降、外貨準備の急減は回避されていたが、2016年11月には月間691億米ドル減少するなど、再び減少幅が拡大し始めている。元安と外貨準備急減の組み合わせは「人民元ショック」の引き金となり得るだけに、注意が必要であろう。
◆2016年の底堅い景気推移は、乗用車や住宅など、中国政府の政策がよく効く従来型産業が支えた。その素材となる鉄鋼などの生産・輸送の動向に影響を受ける「李克強指数」は大きく改善している。
◆2017年は消費が減速する一方で、インフラ投資と外需が下支え役を果たすことで、景気は大きく落ち込むことはないであろう。実質GDP成長率は2015年の前年比6.9%から2016年は同6.7%程度、2017年は同6.4%程度と緩やかに減速していくと予想している。
◆インフラ投資は2017年も固定資産投資の下支え役を果たそう。インフラ投資の担い手は国有企業であり、2015年以降に返済期限を迎えた地方政府関連債務が低金利・中長期の地方債に置き換わったことが地方政府と国有企業の投資余力を高めている。地方債への置き換えは、2015年は3.2兆元、2016年は5兆元、2017年は6兆元と目され、インフラ投資をサポートしよう。
◆消費関連では、乗用車車両購入税の半減措置(価格の10%⇒5%)は2016年末に終了し、2017年は7.5%の軽減税率とすることが発表された。所得の増加ペースの鈍化は消費の懸念材料である。各種補助金の支給や税金の減免などで需要を一時的に喚起することは可能だが、これは需要の先食いにすぎないことに留意しなければならない。
◆2017年は、先進国景気が緩やかながらも回復すると期待でき、加えて、2016年以降の元安の効果が発現していくことが、中国の輸出改善を後押ししよう。一方で、輸入は、原油など資源価格の上昇により輸入価格は上昇しようが、内需減速により輸入数量の伸びは抑制されよう。原油価格等が大きく上昇すれば、価格上昇効果が相対的に大きくなり、貿易収支の黒字は減少する可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日