2017年の世界経済 ~上下いずれのリスクも米国次第~
2016年12月21日
サマリー
2017年はトランプ相場活況のなかで明けようとしているが、米国次期政権による経済政策はまだ何も始まっていないし、恐らくインフラ投資や減税などの中心的な政策が米国経済を実際に刺激し始めるのは早くて2017年終盤である。それまでの間は、むしろ金利上昇やドル高の引き締め効果が米国景気の逆風になる。人民元ショック、原油価格崩落懸念、FRBの連続利上げ観測など、盛り沢山の不安を抱えて明けた2016年が、経済的には比較的平穏のうちに終えようとしているように、年初の市場センチメントの継続性や予見性は疑ってかかるべきかもしれない。もっとも、2017年の世界経済がトランプ氏次第になることは相当程度の確度で言えると思われる。米国景気の順調な拡大が続けばよいが、仮にそれが不調に転じたとき、成長加速を公言しているトランプ氏は、いったい何をするのだろうか。輸出を善、輸入を悪とみなす同氏が、米国の輸出刺激を目的として、日欧などに米国に足並みを合わせた財政拡大を強要するのであれば御の字である。2017年に起こり得る、数少ないアップサイドリスクと言えよう。しかし、諸外国、恐らくは新興工業国を悪役に仕立て、自国を傷つけながらも、保護主義を激化させるリスクも小さいとは言えない。それが、政治の季節の本格化を迎える欧州で、ナショナリズムが一層沸騰するきっかけになれば、EUの存続に対する疑義が深まる。活況を続けるトランプ相場と裏腹に、挙げればきりがないほどのリスクを内包した2017年が始まる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2016年12月20日
中国:「人民元ショック」再燃リスクに要注意
2016年はオールドエコノミーが下支え、2017年は緩やかな景気減速へ
-
2016年12月20日
2017年の欧州経済見通し
景況感は改善傾向だが、「政治波乱」に対する耐性が試される
-
2016年12月20日
2017年の米国経済見通し
トランプへの期待感は高まるものの、政策効果に過度な期待は禁物
-
2016年12月20日
2017年の日本経済見通し
景気は緩やかな回復を見込むが、海外発の下振れリスクは残存
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月20日
日本経済見通し:2021年1月
1-3月期は小幅な景気悪化を見込むも「二番底」リスクを排除できず
-
2021年01月20日
日本経済中期予測(2021年1月)解説資料
~コロナ禍で変容する世界経済と加速するグリーン化の取組~
-
2021年01月20日
日本経済中期予測(2021年1月)
コロナ禍で変容する世界経済と加速するグリーン化の取組
-
2021年01月20日
中国:V字回復下の中国経済の注目点
感染第2波は回避へ。注目される接触型消費の完全復活の成否
-
2021年01月20日
新たな科学技術・イノベーション政策への期待
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月01日
2020年10月雇用統計
有効求人倍率が1年半ぶりに上昇
-
2020年11月20日
日本経済見通し:2020年11月
経済見通しを改訂/景気回復が続くも、感染爆発懸念は強まる
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目
-
2020年10月15日
緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
ローカルツーリズムが回復に寄与するも、依然厳しい状況が続く