秩序ある国家債務再編は可能か
新興国の債務リスクが懸念される中で、債務再編枠組みの整備が急務
2016年02月04日
サマリー
◆2013年以降、IMFを中心に国家債務再編枠組みの整備に関する議論が活発化している。近年、ギリシャやウクライナによる債務再編やアルゼンチンのホールドアウト裁判といった、象徴的な事例があったからであろう。
◆本稿では、IMF等による国家債務再編枠組みの整備に関する最近の取り組みについて概観した。例えば、民間債権者に関する債務再編は債券の契約条項の改革を通じて、公的債権者に関する債務再編はIMFの貸出規則の改革を通じて、少数の債権者の反対によって債務再編が困難になるホールドアウトを発生させないような枠組みが整備されつつある。
◆他方で、一連の改革に伴って導入された枠組みによって、危機対応のためのセーフティネット、資金フロー、国際協調といった既存の国際金融システムに対して、意図せぬ悪影響を与える可能性がある点には留意が必要であろう。今後は、想定外の悪影響が発生していないかを確認し、要すれば調整を行う必要がある。
◆ただし、国家債務再編枠組みの整備に残された時間は少ないかもしれない。新興国の債務は積み上がり、紛争が発生している国や資源国などを中心にソブリン・スプレッドは上昇している。また、中国経済の成長鈍化が懸念され、アジア各国からはリーマン・ショック以来の大規模な資金流出が発生している。債務危機が発生した後に危機から脱するために必要な秩序ある債務再編枠組みの整備が急務と言えよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月18日
税金読本(10-1)デリバティブ取引の税金の基本
-
2021年01月15日
ポストコロナの人事制度を考える視点
~働く人の意識変化をどう捉えるか~
-
2021年01月14日
2020年11月機械受注
船電除く民需は市場予想に反し2ヶ月連続で増加、回復基調が強まる
-
2021年01月14日
アメリカ経済グラフポケット(2021年1月号)
2021年1月12日発表分までの主要経済指標
-
2021年01月18日
新局面を迎えるナウキャスティング
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月01日
2020年10月雇用統計
有効求人倍率が1年半ぶりに上昇
-
2020年11月20日
日本経済見通し:2020年11月
経済見通しを改訂/景気回復が続くも、感染爆発懸念は強まる
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目
-
2020年10月15日
緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
ローカルツーリズムが回復に寄与するも、依然厳しい状況が続く