サマリー
◆2013年以降、IMFを中心に国家債務再編枠組みの整備に関する議論が活発化している。近年、ギリシャやウクライナによる債務再編やアルゼンチンのホールドアウト裁判といった、象徴的な事例があったからであろう。
◆本稿では、IMF等による国家債務再編枠組みの整備に関する最近の取り組みについて概観した。例えば、民間債権者に関する債務再編は債券の契約条項の改革を通じて、公的債権者に関する債務再編はIMFの貸出規則の改革を通じて、少数の債権者の反対によって債務再編が困難になるホールドアウトを発生させないような枠組みが整備されつつある。
◆他方で、一連の改革に伴って導入された枠組みによって、危機対応のためのセーフティネット、資金フロー、国際協調といった既存の国際金融システムに対して、意図せぬ悪影響を与える可能性がある点には留意が必要であろう。今後は、想定外の悪影響が発生していないかを確認し、要すれば調整を行う必要がある。
◆ただし、国家債務再編枠組みの整備に残された時間は少ないかもしれない。新興国の債務は積み上がり、紛争が発生している国や資源国などを中心にソブリン・スプレッドは上昇している。また、中国経済の成長鈍化が懸念され、アジア各国からはリーマン・ショック以来の大規模な資金流出が発生している。債務危機が発生した後に危機から脱するために必要な秩序ある債務再編枠組みの整備が急務と言えよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:内需不振で強まる減速傾向
2026年は自動車販売台数も急減速(あるいは減少)か
2025年09月24日
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日