サマリー
◆2015年7月より、中国株式市場では市場の混乱の悪化を防ぐため新規株式公開(IPO)が停止されていたが、2015年11月6日に中国証券監督管理委員会(証監会)より、IPOの年内再開の方針と、IPOの制度改正案が公表された。
◆今回のIPO制度改正により凍結資金問題(IPO購入申し込み時に取得可能株数の確定前に資金を先払いすることに伴う多額の凍結資金の発生)が解消されるため、IPO再開による株式市場への負の影響も軽減されると思われる。また、今回の改正は中国当局が2013年11月の第18期三中全会より掲げていた株式市場における重要な改革の一つである上場制度改革(登録制改革)への重要な一歩となる。
◆登録制改革の実施により、証監会が担ってきた上場の是非や発行条件等の判断は市場に委ねられる。改革は市場のリスク判断能力の育成に繋がるとともに、上場審査の効率化、上場企業間での資金獲得競争を促進し、適切な資金配分を促すことが期待されている。また、イノベーションをもたらすような成長性の高いベンチャー企業に上場機会を提供することで、資金面から中国経済の構造転換を支援することに繋がるのではないか。
◆当該改革は証監会自身の権限の縮小に繋がるため、証監会がどこまで改革に踏み切るか、上場制度改革の中身がどこまで実効性のあるものとなるかが今後発表される改正案における焦点の一つとなるだろう。また、今年7月時点で500社以上存在したIPO審査待機企業の問題をいかに解決するかも課題となる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日