中国株式市場のIPO再開・制度改正と今後の登録制改革の方向性

IPOの資金凍結問題は解消、制度改正は登録制改革への重要な一歩

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2015年11月12日

  • 経済調査部 研究員 中田 理惠

サマリー

◆2015年7月より、中国株式市場では市場の混乱の悪化を防ぐため新規株式公開(IPO)が停止されていたが、2015年11月6日に中国証券監督管理委員会(証監会)より、IPOの年内再開の方針と、IPOの制度改正案が公表された。


◆今回のIPO制度改正により凍結資金問題(IPO購入申し込み時に取得可能株数の確定前に資金を先払いすることに伴う多額の凍結資金の発生)が解消されるため、IPO再開による株式市場への負の影響も軽減されると思われる。また、今回の改正は中国当局が2013年11月の第18期三中全会より掲げていた株式市場における重要な改革の一つである上場制度改革(登録制改革)への重要な一歩となる。


◆登録制改革の実施により、証監会が担ってきた上場の是非や発行条件等の判断は市場に委ねられる。改革は市場のリスク判断能力の育成に繋がるとともに、上場審査の効率化、上場企業間での資金獲得競争を促進し、適切な資金配分を促すことが期待されている。また、イノベーションをもたらすような成長性の高いベンチャー企業に上場機会を提供することで、資金面から中国経済の構造転換を支援することに繋がるのではないか。


◆当該改革は証監会自身の権限の縮小に繋がるため、証監会がどこまで改革に踏み切るか、上場制度改革の中身がどこまで実効性のあるものとなるかが今後発表される改正案における焦点の一つとなるだろう。また、今年7月時点で500社以上存在したIPO審査待機企業の問題をいかに解決するかも課題となる。

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