サマリー
◆6月以降の株価下落に伴い、中国の個人投資家は、株式市場から資金を引き揚げ、銀行の短期預金へと移している。一時的に短期預金に滞留した資金は様々な資産に振り分けられていくと考えられ、中でも資金流入先として注目されるのはインターネット上で借入をしたい個人・企業と貸出をしたい個人・企業のマッチングを行うP2P(Peer to Peer lending)である。
◆P2Pへの資金流入は、株価下落後の7月・8月に急増している。これは、相対的に高い運用利回りを維持していることが投資家を呼び込んでいることに加え、中小企業や個人といった借入主体にとっても、資金調達先の多様化という観点から重宝されていることが背景にはあろう。
◆しかしながら、P2Pは発展段階であり、投資家は規制の未整備がもたらす、①見せかけの債務延滞比率の低さ、②問題プラットホームの増加といったリスクに晒されている。インターネット金融の健全な発展に向け、規制・監督の整備が望まれるところであり、現在、中国当局は関連法案を次々と公表している状況にある。
◆ただし、規制・監督の整備が拙速に行われた場合、P2P内外に悪影響が及ぶ可能性がある点には留意が必要である。具体的な懸念点としては、①P2P内への影響として、P2Pへの最低資本金規制の導入に伴うプラットホームの破たん増加、②P2P外への影響として、配資公司への規制強化に伴う株価への下押し圧力、といった点が挙げられる。中国当局の慎重な対応が望まれよう。
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