サマリー
◆中国当局は、人民元の国際化に向けて様々な取り組みを進めている。2015年は通貨の国際化のメルクマールとなるIMFのSDRバスケット構成通貨の見直しのタイミングであり、人民元が構成通貨に入るか否かが論点となっている。
◆人民元の構成通貨入りは2010年の見直しの際も検討されたが、要件を満たしているとIMF理事会で認定されなかったため、構成通貨入りは承認されなかった。中国当局による人民元の国際化に伴い、人民元の利用は急速に拡大しているものの、他の構成通貨である米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円と比べて利用シェアは小さく、2015年の見直しにおいても、データ上は人民元の構成通貨入りの可能性は低いと言える。
◆構成通貨入りはIMF加盟国が参加する理事会に決定権限があるため、中国当局は人民元の構成通貨入りによって想定される課題に事前に対処することを通じて、各国にアピールする必要がある。具体的には、①流動性の確保と人民元の短期金利の安定化、②為替レートの自由化、③各国中銀等による中国本土に対する投資制限の緩和、といった課題が挙げられる。
◆中国当局も人民元の構成通貨入りに向けて、資本取引の自由化や人民元を自由利用可能通貨にするための改革を積極化させるスタンスを示している。他方で、「管理された人民元の自由化」を目指すとも述べているように、改革は資本取引や人民元の完全なる自由化を意味するわけではない。特に6月以降の株価下落に伴い、改革への慎重論が高まりつつあることから、SDR見直し議論が本格化する中で、改革が実際に進展するかが焦点となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日