中国人民元のSDR構成通貨入りと各国の思惑

英国は人民元ビジネスを拡大、日本もキャッチアップを目指す

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サマリー

◆11月に開催されるIMFのSDR構成通貨見直し理事会において、中国人民元が構成通貨入りするかが注目されている。IMFのSDR非公式理事会ペーパーを見ると、既存の指標でもIMFが提案した新たな指標でも、人民元がSDR構成通貨の要件を確実に満たすとは言い切れない。そのため、IMFは人民元のSDR構成通貨入りをサポートするために中国に様々な金融改革を要請しており、中国当局も人民元レートの算出方法の変更といった改革を実施することでその要請に応えている。


◆IMFと中国は互いに協力しながら、人民元の構成通貨入りに向けた努力を継続している。IMFと中国の協力関係の背景には、SDR構成通貨入りを通じて、人民元を既存の国際金融秩序に組み込むとともに、中国の金融改革を積極化させようとするIMF側の思惑があると考えられる。また、中国当局にとっても人民元のSDR構成通貨入りは、人民元の国際化の象徴という意味合いだけでなく、AIIBといった中国独自の対外戦略を推し進める上で重要なツールとなる可能性があると言えよう。


◆各国にとっても、人民元のSDR構成通貨入りは千載一遇のビジネスチャンスとなっている。例えば、英国は人民元のSDR構成通貨入り後を見据え、構成通貨入りをサポートすることによって、人民元建て中国人民銀行債の発行やRQFII(人民元適格海外機関投資家)枠を拡大するなど人民元ビジネスの積極化を図っている。


◆翻って、日本は人民元ビジネスにおいて足元では各国よりも立ち遅れている。10月の楼継偉財務部長に対する麻生財務大臣の日本での人民元クリアリングバンクやRQFII枠の設定リクエストから、日本も人民元のSDR構成通貨入りを前提に、人民元ビジネスを推し進めようとする意図がうかがえよう。

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