サマリー
◆2014年11月21日、中国人民銀行は貸出基準金利と預金基準金利の引き下げを発表した。実施は11月22日から。1年物貸出基準金利は6.0%⇒5.6%へ0.4%ポイント、1年物預金基準金利は3.0%⇒2.75%へ0.25%ポイント引き下げられた。
◆中国人民銀行によれば、今回の貸出基準金利の引き下げは、特に小型・零細企業の「融資難、融資貴」(資金調達難、資金調達コスト高)問題の改善を図ることが目的である。その一方で、「利下げは、金融政策が(緩和に)変化したことを意味しない」と釘をさしている。恐らく、今回の利下げが、高めの成長率追求を目指した全面的な金融緩和の始まりではなく、あくまでも景気下支えを目的としていることを強調したいのであろう。
◆預金基準金利の引き下げ幅は小さく、上限が基準金利の1.1倍⇒1.2倍へ引き上げられたことで、上限金利を適用すれば、1年物預金金利は利下げの前後で変わらない。この場合、単純計算では預貸スプレッドは、従来の2.7%⇒2.3%へ縮小する。銀行が利息収入を維持しようとすれば、より高い貸出金利の設定が可能な中小企業・零細企業向けの貸出を増やすことも選択肢のひとつとなる。
◆さらに、今回の利下げは、不動産(住宅)市場のテコ入れにつながる可能性がある。既に、前月比でみた価格下落幅が縮小し、住宅在庫が圧縮され始めるなど、9月末の中国政府による住宅テコ入れ策の発表がセンチメントの改善に寄与している。こうした動きを住宅ローン金利の低下でさらにサポートしようとしているのであろう。
◆預金基準金利に対する上限金利の引き上げは、金利自由化に向けた重要なステップである。預金金利自由化の前提は、預金保険制度が確立され、金融機関破たん処理法が制定されることであり、今後の金融制度改革の行方にも注目したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:新5カ年計画の鍵は強国と自立自強
基本方針は現5カ年計画を踏襲、構造問題の改革意欲は低下?
2025年10月24日
-
中国経済見通し:米中摩擦と厳しさ増す内需
固定資産投資は前年割れ。米中貿易戦争は再び激化?
2025年10月21日
-
15・5計画、構造問題への処方箋を出せるか?
5年間の平均成長率目標は設定「できない」可能性大
2025年10月21日
最新のレポート・コラム
-
日本維新の会が掲げる税制関連施策
所得税インフレ調整・給付付き税額控除の議論が加速する見込み
2025年10月28日
-
親子上場などに関する開示議論の再開
不十分な開示状況に対して、開示項目の記載必須化に向けた議論も
2025年10月27日
-
健康経営の新たな戦略基盤
従業員多様化時代のウェルビーイングプラットフォームの可能性
2025年10月24日
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
-
バブル期と比較しても、やはり若者が貧しくなってはいない
~未婚若年層の実質可処分所得・1980年からの超長期比較版
2025年10月27日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

