サマリー
国務院は、2013年2月3日付けで、国家発展改革委員会、財政部、人力資源社会保障部の連名による「所得分配制度改革の深化に関する若干の意見」を各地方政府と国務院の各部・委員会等に送付した。
主要目標は、①2020年までに都市・農村住民の一人当たり実質所得を2010年比で倍増し、中低所得者の所得の伸びがさらに大きくなるように努力し、人々の生活水準を全面的に引き上げる、②都市・農村間、地域間、個人間の所得格差問題を改善し、貧困扶助対象を大幅に減少させ、中間層を持続的に拡大し(中央が丸く厚い)オリーブの実型の分配構造を徐々に形成する、③合法的な所得は保護し、高すぎる所得は合理的に抑制し、隠れ所得(灰色収入)は規範化し、違法な所得は断固として取り締まる、④国民所得分配に占める個人所得のウエイト、第一次分配に占める雇用者報酬のウエイトを徐々に高め、財政支出に占める社会保障・雇用など民生支出のウエイトを明らかに引き上げる、とした。基本路線は、胡錦濤政権下で実施されてきた底辺の底上げと民生改善の継続である。
所得格差が広がれば、資産格差はさらに拡大する。しかし、それを縮小させるための具体的な措置は盛り込まれていない。2011年1月28日に上海市と重慶市の一部で不動産税(固定資産税)がテスト導入されてから2年が経過したが、地域的な広がりは見せていない。相続税に至っては、「適当な時期に相続税を課税する問題を研究する」と中国語では14文字の言及にとどまった。
横たわるのは、既得権益層の痛みを伴う改革の難しさである。同じ構図は、中国国民の深刻な健康被害と日本を含む周辺国・地域への影響が懸念される大気汚染物質PM2.5(直径2.5㎛以下の超微粒子)の問題に再現されている。粉塵をまき散らすディーゼルトラック・バス、硫黄など汚染物質を多く含む燃料…。日米欧の技術や製品を全面的に導入していれば様相が異なっていたはずだが、これらは大型国有企業が大きな存在感を持つ分野であり、そのトップは、共産党指導部への登竜門と位置付けられている。
「既得権益の打破」が習近平総書記ら新指導部の「改革」の本気度を測るバロメーターといえるが、残念ながらその兆候はみえていない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:不動産不況の底打ちに期待
見通しを2026年4.5%→4.6%、2027年4.2%→4.4%に引き上げ
2026年10月22日
-
中国:26年7~9月は4.5%成長の低空飛行
さらなる景気テコ入れ策の可能性も
2026年10月19日
-
米中貿易戦争、勝者は中国
伝家の宝刀・レアアース、輸出先の分散化、迂回輸出
2026年10月02日
最新のレポート・コラム
-
利用広がる議決権パススルー
投資信託のリテール顧客による議決権行使の選択が現実のものに
2026年10月26日
-
日本版米国型AWMビジネスモデルを創出するための条件
~投資銀行型と商業銀行型の比較~『大和総研調査季報』2026年秋季号(Vol.64)掲載
2026年10月26日
-
次世代の「地域金融の課題と競争のあり方」
~最新データに基づく地域銀行の競争可能性の再試算~『大和総研調査季報』2026年秋季号(Vol.64)掲載
2026年10月26日
-
マル優・NISA等の非課税制度が家計金融資産に及ぼした影響の長期分析
~家計の国債保有優遇策の検討に向けた政策的示唆~『大和総研調査季報』2026年秋季号(Vol.64)掲載
2026年10月26日
-
子どもが幼いうちは子育てに専念したい世帯にも目配りを
2026年10月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

