米国のリテール金融のパラダイムシフト

~求められる顧客本位の投資助言と生産性向上の両立~『大和総研調査季報』2023年新春号(Vol.49)掲載

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サマリー

米国におけるリテール金融のパラダイムシフトは既存のビジネスモデルの分解から始まった。「顧客にとっての付加価値の追求」と、「金融機関にとっての儲ける仕組みの追求」が別々の要素に分かれたのである。この2つの要素のバランスを調整するだけなら既存のビジネスモデルを修正すればよい。しかし、顧客の利益に反する不祥事等に起因して、規制強化が急速に進む中で、顧客本位の業務運営の必要性が高まった。その結果、顧客にとっての「付加価値の追求」に比重を移す、ビジネスモデルの大きな変革が必要となった。これに顧客ニーズ対応のカスタム化、パーソナル化を可能にするテクノロジーの進化が加わることで、リテール金融のパラダイムシフトが起きた。

大手証券をはじめとする米国リテール証券業界では、ここ10年で、金融商品を単品で売買するブローカレッジ中心の“フローのビジネス”から資産管理型中心の“ストックのビジネス”への移行が進んでいる。投資アドバイスがコモディティ化する中、顧客本位の業務運営に向けた規制の強化によって、ファイナンシャル・アドバイスの付加価値が高まっており、それがリテール証券業界のパラダイムシフトにつながっている。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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