2022年09月22日
サマリー
◆国内初のトランジションボンド発行から1年が経過したことを機に、その特徴や関連するガイドライン等について概観する。さらに、低炭素化や脱炭素化への移行において注目が高まっているトランジションボンドとサステナビリティ・リンク・ボンドの発行状況を確認し、今後の展望や注目点について取り上げる。
◆グリーンウォッシュや情報開示などの面で課題を抱えていたトランジションボンドの信頼性を確保するため、これまでに国際的なガイドラインやハンドブック、基本指針が策定されてきた。ガイドライン等の策定により、発行体はトランジションボンドを発行しやすくなり、国内では、日本郵船が2021年7月に初めて発行し、その後も発行が相次いでいる。
◆トランジションボンドとサステナビリティ・リンク・ボンドの累積発行額と累積発行件数はいずれも着実に増加しており、低炭素化や脱炭素化に向けた資金調達手段として活用が進んでいる様子がうかがえる。債券の発行額に関しては、両債券ともに100~199億円が最も多く、発行年限は5~14年のレンジに多い。
◆2050年のカーボンニュートラル目標を実現するには、「ブラウン企業」の低炭素化や脱炭素化への移行を促すことが重要であり、そうした発行体の中長期的な資金調達手段としてトランジションボンドとサステナビリティ・リンク・ボンドの活用が一層拡大すると見込まれる。また、政府によるGX(グリーントランスフォーメーション)の推進強化の影響にも注目したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
注目高まるサステナビリティ・リンク・ボンドの特徴と今後の展望
多様化しながら拡大するSDGs債の押さえておくべきポイント
2022年03月23日
-
GHG排出削減におけるグリーンボンドの限界
ICMAがトランジションファイナンスに関するハンドブックを公表
2021年01月12日
-
CBIガイドラインからみる、トランジションボンドの定義
透明性に関する原則とトランジションの段階的な類型がポイント
2021年01月12日
同じカテゴリの最新レポート
-
CGコードでの現預金保有の検証に対する上場会社の懸念
一見対立しているようだが、通底する投資家と会社側の意見
2025年11月07日
-
非上場株式の発行・流通を活性化する方策
「スタートアップ企業等への成長資金供給等に関する懇談会」が報告書を公表
2025年10月29日
-
親子上場などに関する開示議論の再開
不十分な開示状況に対して、開示項目の記載必須化に向けた議論も
2025年10月27日

