GXで期待されるトランジションボンドの特徴と注目点

国内初の発行から1年を経て見えてきた傾向と今後の展望

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  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 細田 健介

サマリー

◆国内初のトランジションボンド発行から1年が経過したことを機に、その特徴や関連するガイドライン等について概観する。さらに、低炭素化や脱炭素化への移行において注目が高まっているトランジションボンドとサステナビリティ・リンク・ボンドの発行状況を確認し、今後の展望や注目点について取り上げる。

◆グリーンウォッシュや情報開示などの面で課題を抱えていたトランジションボンドの信頼性を確保するため、これまでに国際的なガイドラインやハンドブック、基本指針が策定されてきた。ガイドライン等の策定により、発行体はトランジションボンドを発行しやすくなり、国内では、日本郵船が2021年7月に初めて発行し、その後も発行が相次いでいる。

◆トランジションボンドとサステナビリティ・リンク・ボンドの累積発行額と累積発行件数はいずれも着実に増加しており、低炭素化や脱炭素化に向けた資金調達手段として活用が進んでいる様子がうかがえる。債券の発行額に関しては、両債券ともに100~199億円が最も多く、発行年限は5~14年のレンジに多い。

◆2050年のカーボンニュートラル目標を実現するには、「ブラウン企業」の低炭素化や脱炭素化への移行を促すことが重要であり、そうした発行体の中長期的な資金調達手段としてトランジションボンドとサステナビリティ・リンク・ボンドの活用が一層拡大すると見込まれる。また、政府によるGX(グリーントランスフォーメーション)の推進強化の影響にも注目したい。

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