2022年03月23日
サマリー
◆世界的に脱炭素社会やSDGsの実現に向けた取り組みが活発化する中、SDGs債の発行が増加している。本稿では、ESG投資をはじめとするサステナブルファイナンスの潮流を踏まえた上で、足元で発行が増え始めているサステナビリティ・リンク・ボンドを中心にSDGs債の特徴と仕組みを概観し、今後の展望や注目点について考察した。
◆SDGs債は、(1)資金使途の制限の有無、(2)目標・戦略の設定の有無、により大きく分けられ、その適否は発行体ごとに異なる。サステナビリティ・リンク・ボンドは、「サステナビリティ・パフォーマンス目標(SPTs)」の達成状況により、金利条件などの債券構造が変化し得る点が大きな特徴である。同債券は、資金使途を定めることにより、グリーンボンド等の特性と組み合わせた形(グリーンボンド等×サステナビリティ・リンク・ボンド)で発行することもできる。
◆債券構造が変化する際のスキームに関しては、当初、SPTsが未達の場合に利率を引き上げる「クーポン・ステップアップ型」が採用されていた。ただし、日本では、投資家が恩恵を受けるスキームであるという問題などを背景に採用されなくなっており、現在、環境団体等に寄付を行う「寄付型」の発行事例が最も多い。
◆日本におけるSDGs債の発行は今後も拡大傾向が続くと見込まれる。近年、脱炭素社会やSDGsの実現に向けた中長期ビジョンや経営計画を策定する企業が増えており、こうした状況がサステナビリティ・リンク・ボンド等への追い風になると期待される。企業には、発行コスト以上に、SDGsの実現に必要な事業資金の安定的な調達やレピュテーション向上といったメリットの方が大きくなるのかという長期的な視点が重要になる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日