2021年01月19日
サマリー
◆新型コロナウイルスの感染拡大が継続する中、中小企業の財務活動には依然として強い圧力が加わっている。売上の急減に伴う資金繰りのひっ迫については、金融機関の積極的な融資に代表される資金繰り支援策が機能している。結果として、過去に資金繰りがひっ迫した時期に比べて目立った倒産の増加が見られていない。
◆もっとも、厳しい事業環境が継続する中においては、引き続き資金繰りが課題となりつつ、企業のバランスシートがどこまで負債の積み増しに耐えられるかという点も焦点となる。マクロで見るとこれまで20年間、企業が財務基盤を充実させてきたことはポジティブである一方、コロナ禍の影響を特に大きく受ける宿泊業・飲食業の財務基盤にやや脆弱性が見られるのは気がかりである。
◆また、中小企業への資金供給の要である金融機関については、頑健な健全性を保っている一方で、信用コストを吸収する本業利益が薄くなっていることが懸念材料である。担保の価値という観点から、足元で上昇ペースが鈍化し始めた地価も注視すべき点である。
◆先行きについては、ワクチンの接種拡大による感染拡大の収束と経済活動の正常化に至るまでの間は、資本性資金の活用によって傷んだバランスシートを補強する対応が考えられる。リスクとしては、①拙速な資金繰り支援策の引き揚げ、②事業の継続を断念する休廃業の増加の2点が挙げられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
改正金融機能強化法のコロナ特例措置がもたらす功罪
広がる入口と狭まる出口
2020年07月30日
-
「新常態」への適応を目指す事業会社に対し高まる公的機関の資本性資金の供給
過去事例は政府系機関がリスクマネーを供給する重要性を示唆
2020年07月30日
-
新型コロナ禍の企業の資金調達環境に見られる特徴と今後の展望
政策効果で覆い隠されたリスクは今後徐々に顕在化へ
2020年09月10日
同じカテゴリの最新レポート
-
グロース市場改革を企業はどう捉えているか
投資家ニーズを汲み上げ、株価を意識的にデザインする必要性
2025年06月13日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
成長と新陳代謝を促進するグロース市場改革
スタンダード市場への影響も注視
2025年05月12日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日