日本銀行がETF・J-REITの市場売却を決定

100年以上かけた超長期売却計画には備えが必要

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サマリー

◆日本銀行(日銀)は、2025年9月19日の金融政策決定会合で、日銀が保有するETF・J-REITの市場売却を行うことを全員一致で決定した。日銀が保有するETF・J-REITの残高が、それぞれ簿価で37兆1,861億円、6,550億円であることを考えると、売却完了までに100年以上要すると見込まれ、日銀が非常にゆっくりしたペースでの売却を企図していることがわかる。

◆「金融機関から買入れた株式」の残高は、ピーク時(2004年9月)でも簿価で約2兆円と、現在のETFの残高と比較すると規模が小さく、また、金融危機時、株価が非常に低いタイミングで買い入れたため、損失が生じにくく、売却は相対的に容易だったと思われる。

◆計画通りに進めた場合でも売却完了までに100年以上の時間が必要となることに加えて、金融市場が不安定化した場合には、日銀は売却ペースを鈍化させると思われるため、さらに期間は長期化するだろう。それだけの時間がかかると、資産価値の変化が起こることは避けられない。たとえ日銀の収益が悪化し、赤字または万が一債務超過に陥ったとしても、金融政策の運営力に支障は生じないと思われるが、国庫納付金の減少などを通じて国民負担が増加する可能性は否定できない。ETFの価格変化に対して事前に引当金を積み、特別損失の計上額を抑えるのが望ましいのではないか。市場への影響を最小限に抑えつつ、かつ損失を極力回避しながら、これほどの規模の資産を売却することは容易ではないと思われる。超長期戦に挑むにあたって、万全な備えが求められよう。

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