2013年02月04日
サマリー
◆2004年2月に導入された資本性借入金の利用が2011年後半から増加傾向にある。資本性借入金は、金融機関の中小企業等向け貸付金のうち“十分な資本性が認められるもの”について、金融検査の際に資本とみなして融資先の債務者区分を査定できる仕組みである。新規融資が受けやすくなることに加え、資金繰り改善効果が期待されている。
◆“十分な資本性”が認められるためには、長期間償還不要で金利設定が業績に連動することや、法的破たん時の劣後性が確保されていることが条件となる。資本性借入金はDES(Debt for Equity Swap:債務の株式化)に似た仕組みであるが、債権を別の条件の債権に転換することからDDS(Debt for Debt Swap:債務の劣後化)と呼ばれる。借り手側は期限が到来すれば返済する義務があり、貸し手側に議決権が付与されることもない。
◆資本性借入金の利用が想定されるのは、主に財務状態が一時的に悪化しているものの、時間をかければ再生が可能と見込まれる中小企業であるが、創業まもない企業や、新たな事業に取り組む企業の資金調達手段としても利用を推進する動きがある。しかし、利用の仕方次第では不良債権の増加につながる可能性もあることに注意が必要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中小企業金融支援策の縮小とその影響
体力の限界を前に廃業を選ぶ企業が増加する可能性
2012年11月13日
-
中小企業金融円滑化法の失効で何が変わるのか
経済全体への影響は限定的だが、他の中小企業金融支援策の影響に注意
2012年05月10日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日