中小企業金融円滑化法の失効で何が変わるのか

経済全体への影響は限定的だが、他の中小企業金融支援策の影響に注意

RSS

サマリー

◆2012年3月、「中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法)」の延長が決定した。円滑化法は、金融機関に対し中小企業や住宅ローンの借り手が貸付条件の変更等を申し出た場合、出来る限り対応するよう求めたものである。2009年12月に施行され、当初2011年3月末に失効するものと規定されていたが、2度の法改正を経て、2013年3月末に失効する予定である。

◆円滑化法の施行に合わせ、金融庁は監督指針および検査マニュアルの改正を行い「貸出条件緩和債権(不良債権の一類型)」に該当するか否かの判断基準を緩和した。しかし、金融機関の貸出条件緩和債権の残高の推移をみると、円滑化法の施行前後ではあまり大きな変化はない。貸出条件緩和債権の判断基準は2008年11月にも緩和されており、金融機関(特に地域銀行、協同組織金融)の残高はこの前後で大きく変化している。

◆円滑化法が2013年3月末に失効した場合、中小企業心理の悪化は懸念されるが、経済全体に与える影響(不良債権の増加や連鎖倒産など)は限定的であろう。しかし、リーマン・ショック以降に実施されている数々の中小企業金融支援策が同時に期限切れとなった場合、資金繰りが厳しくなる中小企業が出てくる可能性が懸念される。

◆中小企業の倒産理由で最も多いのは「販売不振」である。いくら資金繰りを一時的にサポートしても、本業が立ち直らなければ事業を続けていくことは難しい。そもそも中小企業に対して資金繰りを支援する前提は「本業が将来的に立ち直ること」である。内閣府・金融庁・中小企業庁は2012年4月に「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」を策定した。金融機関のコンサルティング機能強化や、企業再生支援機構および中小企業再生支援協議会の機能および連携の強化などが掲げられている。中小企業が構造的に抱えている問題も併せて解決し、中小企業の競争力強化への取組みを行っていく必要があろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート