2012年05月10日
サマリー
◆2012年3月、「中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法)」の延長が決定した。円滑化法は、金融機関に対し中小企業や住宅ローンの借り手が貸付条件の変更等を申し出た場合、出来る限り対応するよう求めたものである。2009年12月に施行され、当初2011年3月末に失効するものと規定されていたが、2度の法改正を経て、2013年3月末に失効する予定である。
◆円滑化法の施行に合わせ、金融庁は監督指針および検査マニュアルの改正を行い「貸出条件緩和債権(不良債権の一類型)」に該当するか否かの判断基準を緩和した。しかし、金融機関の貸出条件緩和債権の残高の推移をみると、円滑化法の施行前後ではあまり大きな変化はない。貸出条件緩和債権の判断基準は2008年11月にも緩和されており、金融機関(特に地域銀行、協同組織金融)の残高はこの前後で大きく変化している。
◆円滑化法が2013年3月末に失効した場合、中小企業心理の悪化は懸念されるが、経済全体に与える影響(不良債権の増加や連鎖倒産など)は限定的であろう。しかし、リーマン・ショック以降に実施されている数々の中小企業金融支援策が同時に期限切れとなった場合、資金繰りが厳しくなる中小企業が出てくる可能性が懸念される。
◆中小企業の倒産理由で最も多いのは「販売不振」である。いくら資金繰りを一時的にサポートしても、本業が立ち直らなければ事業を続けていくことは難しい。そもそも中小企業に対して資金繰りを支援する前提は「本業が将来的に立ち直ること」である。内閣府・金融庁・中小企業庁は2012年4月に「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」を策定した。金融機関のコンサルティング機能強化や、企業再生支援機構および中小企業再生支援協議会の機能および連携の強化などが掲げられている。中小企業が構造的に抱えている問題も併せて解決し、中小企業の競争力強化への取組みを行っていく必要があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
資本性借入金の効果と副作用
中小企業の資金繰りが改善する可能性と不良債権増加の危険性
2013年02月04日
-
中小企業金融支援策の縮小とその影響
体力の限界を前に廃業を選ぶ企業が増加する可能性
2012年11月13日
同じカテゴリの最新レポート
-
「資産形成と成長の好循環」のための金融・資本市場の方向性
社債市場の活性化と家計の資産構成見直しが重要
2026年05月29日
-
反対3名で日銀は金利据え置きを決定
政策委員の投票行動による政策変更のシグナル
2026年05月07日
-
インフレ懸念vs.景気下押し懸念
金融政策の舵取りは複雑化も、予防的利上げが必要
2026年04月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

