中小企業金融支援策の縮小とその影響

体力の限界を前に廃業を選ぶ企業が増加する可能性

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サマリー

◆2008年後半から原油高・原材料価格の高騰による企業収益状況の悪化や、サブ・プライムローン問題に端を発する金融危機などを受け、中小企業の資金繰りを支える政策が相次いで実施されてきた。

◆一連の金融支援策は時限的に導入されたものであることから、徐々に縮小に向かい始めている。例えば、セーフティネット保証第5号は、2012年11月から利用可能な企業の範囲が縮小、中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法)も2013年3月末に失効が予定されている。どちらの制度も、中小企業の1割程度が利用していると推測されている。セーフティネット保証第5号に関しては30~40万社程度、円滑化法の失効は6~8万社程度の企業が影響を受ける可能性がある。

◆影響を受ける企業数は多いものの、セーフティネット保証第5号の指定業種の縮小に関しては受け皿となり得る「経営力強化保証」が創設されていること、円滑化法失効に関しては貸出条件緩和債権の例外要件は変更されないことなどから、倒産にまで至る企業は限定的と考えられる。

◆しかし、倒産件数では測れない、隠れた市場退出は増加する可能性がある。金融支援策の縮小などにより将来的な資金調達コストの増加が予想される一方、収益力の向上が見込めないのであれば、債務弁済が可能なうちに廃業を選択する企業は少なくないだろう。廃業により雇用や技術が消失しないよう、受け皿を確保する支援が求められる。

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