12月日銀短観から読み解く企業の資金繰り

改善傾向だが依然厳しい中小の資金繰り、いざという時の備えを

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サマリー

◆日本銀行から全国企業短期経済観測調査(2011年12月調査)が発表された。当該調査の企業金融の項目をみると、企業の資金繰り判断DIは2%pt、金融機関の貸出態度判断DIは7%ptと、ともに前回の9月調査から横ばいであった(全産業・全業種)。両DIは企業規模が大きいほど数値が高くなる(資金繰りが楽である・金融機関の貸出態度が緩い)が、前回調査に比べれば企業規模間の差が縮まる傾向がみられた。

◆借入金利水準判断(最近)も-5%ptと前回調査から横ばいであったが、先行き調査は1%ptであり、先行きの借入金利水準上昇を予想する企業がわずかに多い。

◆日本銀行が四半期に一度発表している「主要銀行貸出動向アンケート調査」の貸出運営スタンスDIは近年、過去3ヶ月、先行き3ヶ月ともにプラスで推移しており、銀行は貸出に積極的な姿勢をみせている。ただ、貸出運営スタンスDIは企業規模が小さいほど高く、全国企業短期経済観測調査の金融機関の貸出態度判断DIの結果とは逆である。資金を調達したい企業と、金融機関が資金を貸したい企業がうまく合致していない可能性が示唆される。

◆一般的に、企業規模が大きいほど信用力が高く、資金調達に複数の選択肢を持っており、資金の出し手も多い。中小企業への資金の出し手は、金融機関を除くと基本的に縁故者に限られてしまうものの、社債の発行等、資金調達経路の複線化により、資金調達コストの比較および削減を行うことは可能である。大企業に限らず、借入以外の資金調達経路の検討が必要ではないだろうか。

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