手形・小切手廃止のボトルネックは何か

支払早期化の次は中小企業の経理業務のデジタル化が課題

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サマリー

◆手形・小切手機能の全面電子化に向けた取り組みが進行中である。送金以外に支払繰り延べ機能を持つ約束手形に着眼すると課題は3点ある。第1に、延べ払いの動機となる資金不足の解消である。第2は、支払手形から短期借入金へ資金調達手段のシフトである。第3は、紙の手形から「でんさい」(電子記録債権)への移行である。繰り延べ機能のない小切手はインターネットバンキングへの移行が課題となる。

◆支払手形の残高はこの30年間で4分の1以下の水準となったが、減少ペースは約10年前から鈍化している。発行においては、建設業などサプライチェーンの上流にある業種、規模別には大企業の割合が高い。もっとも以前に比べれば資金不足は緩和され、資金調達手段としての手形機能は薄れつつある。現金払化、手形サイト短縮、割引料の負担を旨とする下請法の指導基準の改正もあり、なお一段の手形削減が進むと期待される。

◆残るボトルネックがデジタル化だ。特に事業規模が小さく、平均年齢が高い中小企業の課題が大きい。支払側において手形・小切手機能を電子化しても、受取側で対応できなければネットワークが成立しない。でんさい、インターネットバンキングがデジタル化された経理事務の1つの機能であることを考えれば、必要なのは経理業務全般に視野を広げたデジタル化支援である。

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