2023年06月21日
サマリー
◆地方銀行の子会社等が増えている。貸出の量的拡大のビジネスモデルからの転換を目指した多角化戦略が背景にある。業務範囲規制や出資規制の緩和も後押しした。事業承継目的の投資が認められたことを契機に投資専門会社の新設が目立つ。
◆地銀の多角化には外販拡大とニーズ囲い込みの方向性が見出せる。人材紹介やDXコンサルなど以前からあった子会社が、収入依存度規制を超えて外販部門を強化する方向性だ。もう1つは、取引先との密な接点を活かして発見した新たなニーズを取り込む方向性である。信用格付で得られるリスク情報はニーズ情報でもある。
◆新設が相次ぐ投資専門会社の位置づけが今後の課題だ。コンサルティングや人材紹介、地域商社など多角化戦略で揃えた新たな機能は、その土台を融資と投資のどちらにするかで性質が異なるからだ。手数料ビジネスの拡大と位置づけるのか、イグジットによる回収を目指した取引先企業の育成ツールと位置づけるのかの違いである。水と油の関係にある融資文化と投資文化の理解と協調が多角化戦略の定着のカギとなるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
融資ビジネスから投資ビジネスへ 銀行が新たに取組む「企業支援」の課題
根底にある融資文化と投資文化の違いを直視すること
2021年02月04日
-
貸出先業種でみた地銀・信金の違い
再編後の地域経済エコシステムにおける中小企業金融の担い手
2022年03月02日
同じカテゴリの最新レポート
-
日本のウェルス・アセットマネジメントビジネスの方向性
~米欧と同じ付加価値を追求しているか~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
米国ウェルスマネジメント市場発展の経緯と今後の展望
~付加価値追求とインセンティブの調和~『大和総研調査季報』2025年新春号(Vol.57)掲載
2025年01月24日
-
日本のウェルスマネジメント市場のポテンシャルを探る
~大和総研「日本経済中期予測」に基づく将来推計~『大和総研調査季報』2024年秋季号(Vol.56)掲載
2024年10月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日