2021年04月21日
サマリー
コロナ禍にあってデジタル化とグリーン化が加速する中、投資銀行のビジネスモデルは長期的な次世代モデルの構築に向けた分岐点にあると考えられる。この分岐点での判断を誤ると投資銀行、金融市場のレゾンデートルが問われかねない。リーマン・ショック後、規制が強化され、欧米投資銀行がハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルから脱却するために、自己勘定のFICC事業の縮小・再構築など構造改革に取り組んできた。市場のデジタル化の進展によって金融仲介機能での役割を高頻度トレーディング業者に大幅に代替され、証券取引所間の競争が激化し、相場に関係なく短期投資を目的とした高頻度、大量の取引が増え、価格発見機能が部分的に不全となることで“ 市場の質” が劣化し始めている。その一方、グリーン化に代表されるESG投資は、長期的に経済・社会の持続可能性を高めるような投資の結果を重要視する方向に投資方針を変換することを投資家と投資銀行に求めている。投資銀行は、ESG分野のソリューションにこそ技術的なイノベーションを活用して、個々の投資家のESGへの関心、投資方針を具体的な長期投資に反映させるように、ESGリサーチエコシステムを変革して、アドバイザリーの質を高めるウェルスマネジメント中心のビジネスモデルに移行する必要があろう。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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