生命保険会社の資産運用の現状と課題

国際的な規制強化の潮流と「量的・質的金融緩和」が生保の資産運用にもたらしつつある影響

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  • 島津 洋隆

サマリー

◆日本の生命保険会社(以下、生保)は巨大な金融資産を擁している機関投資家である。本稿では、生保の資産運用の現状と、それを取り巻く制度面や金融環境面についての課題を取り上げる。


◆2013年3月末時点における主要生保の保有公社債のデュレーションは11.9年と推定される。2003年3月末における推定値である5.8年に対し長期化していることが推測される。その背景に、生保は、超長期の負債(生命保険契約)を抱えている一方で、その負債よりも短い期間の資産を抱えているという「資産・負債のミスマッチ」が以前から存在する。この「ミスマッチ」を解消するために超長期の国債を購入し続けなければならない状況に置かれ続けてきた。

◆2000年に導入された時価会計やVaRの浸透により生保の国債選好が強まった。こうした中で、いわゆる3-3-2規制が撤廃され、資産運用に柔軟性がもたらされることが期待された。しかしながら、日本におけるソルベンシー規制の厳格化や欧州で導入が検討されているソルベンシーⅡにより、超長期国債への選好がさらに強まる可能性がある。


◆デフレ下において名目金利(長期金利)が低い水準で推移していた。そのため、生保が十分な運用成果をあげられず、逆鞘の危険性に苛まれていたとみられる。だが、日本銀行の「量的・質的金融緩和」により、名目金利の上昇並びに株価上昇等の資産効果が発現すれば、生保のバランスシートが改善するとみられる。但し、株式や外債などリスク性資産への積極的な投資をもたらすとは必ずしもいえないだろう。

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