2013年08月28日
サマリー
◆米国の生命保険会社(以下、米国生保)の総資産は、2011年末時点においては、約5.5兆ドル。このうち、定額年金の資産を取り扱う一般勘定は約3.6兆ドル、変額年金等を取り扱う分離勘定は約1.8兆ドル。なお、一般勘定では、長期債が総資産の約7割を占めており、一方で分離勘定では、株式が総資産の約8割を占めている。
◆米国内外の規制強化の潮流である、リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)と世界経済への影響力が大きい巨大な保険会社(G-SIIs)が、米国生保の一般勘定の資産運用に制約をもたらす可能性があると考えられる。
◆米国生保にORSA が適用された場合、一般勘定には以下の3つの影響がもたらされると考えられる。第一に、負債の時価評価額の増大によって純資産が減少し、ソルベンシー比率(健全性)の低下がもたらされることである。第二に、一般勘定における資産と負債の平均残存年数の「ミスマッチ」を解消すべく、公社債への国内債券運用を更に高めることである。第三に、国内債券運用が限界点に行き着いた場合、負債の平均残存期間とマッチした国内債券運用が難しくなるに伴い、定額保証の生命保険の商品開発がより困難になり、一般勘定の資産運用が伸び悩むことである。
◆G-SIIsに指定された保険会社に対しては、各国政府の一般的な基準に上乗せする形で資本を積むよう求められることとなっている。同規制によりG-SIIsに指定された米国の保険会社は従来よりも資産運用に制約を受けることとなろう。加えて、G-SIIsに指定されていない米国の生保についても、同規制が健全性の目安の一つとなり、今後の資産運用の新たな制約になる一つの要因として考えられよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
転機を迎えつつある制度共済
「量的・質的金融緩和政策」下の制度共済の資産運用の現状と課題
2013年06月12日
-
生命保険会社の資産運用の現状と課題
国際的な規制強化の潮流と「量的・質的金融緩和」が生保の資産運用にもたらしつつある影響
2013年07月12日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
ソフトウェア投資の拡大は今後も続くのか
求められるIT人材の育成、中小企業への支援、行政のデジタル化
2024年04月25日
-
中国経済見通し:名目<実質、実感なき景気堅調
不動産不況に一段の長期化の懸念
2024年04月25日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
大手生保は中長期の事業環境の変化に対応できるか
~本格化するビジネスモデル変革~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
複眼的思考へのヒント
2024年04月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日