投資家が保有している資産を売却したり、事業会社が事業部門を売却したりすることをダイベストメント(Divestment)という。投資(investment)を引き揚げるという意味で、ディスインベストメント(Disinvestment)ともいう。社会的責任投資(SRI)では、特定の企業や業種に関わる有価証券等を投資対象から除外すること、及びすでにそれらの有価証券等を投資対象として保有している場合には、これを売却する手法を指す。ネガティブ・スクリーニングが、特定の企業・業種の有価証券を投資対象から除外する事前的な判断基準であるのに対して、ダイベストメントは、既に保有しているものを売却することに力点を置く。
ネガティブ・スクリーニングやダイベストメントは、欧米の機関投資家の間では、よく用いられる。南アフリカ共和国の人種差別政策に反対し同国への投資を行わない運動が盛んであったが、現代でも非戦闘員に深刻な被害をもたらす恐れの強いクラスター爆弾や地雷の製造企業を投資対象から除外する運動が繰り広げられている。
米国においては、SRIと分類される投資資金残高が2009年末に約3.1兆ドルであった。そのうち1.3兆ドル超が、スーダン・ダイベストメントを投資判断に組み込んでいるといわれており(※1)、ネガティブ・スクリーニングやダイベストメントの判断基準としては、たばこ関連(0.8兆ドル)を超えて、最もよく用いられる。スーダン・ダイベストメントは、紛争が続くスーダン地域において事業を行うことは、武器購入のための資金調達を助けることになるため、そのような地域で事業を行う企業を投資対象から除外するというものである。
米国の州では、公的資金の運用にあたりスーダン・ダイベストメントなど特定の基準を明示的に規則化する場合がある。大学の寄付基金などにも人道問題に関わるダイベストメントは広がっているため資産残高も大きなものになっている。
ネガティブ・スクリーニングやダイベストメントの手法には批判もある。投資家ではなくなるので、企業に対して変革を求めるための対話を行う契機を失うことになる。そのため、社会的に問題のある企業をかえって放置してしまうことになるのではないかと言われる。ネガティブ・スクリーニングやダイベストメントは少数であっても投資対象から除外する資産があるので、投資ポートフォリオの効率性が低下する恐れがあることも、投資手法として問題となろう。
(※1)Social Investment Forum Foundation (2010)“2010 Report on Socially responsible Investing Trends in the United States”
(2012年10月31日掲載)
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