SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)は、企業を評価する際に財務的な評価に加えて、企業の環境問題への対応や社会的な取り組みなどの評価を加味した投資とされている。また、投資効果の面では、SRIは経済的(金銭的)リターンだけでなく、社会的なリターンも考慮したものであり、持続可能な社会の構築に貢献する投資とされている。
SRIは宗教的な理由から出現してきたとされている。その起源については、17世紀に設立されたクエーカー教の思想や、18世紀のメソジスト運動など諸説があるが、投資という観点で用いる今日的な意味でのSRIは、1920 年代に教会資産の運用の際に酒やたばこなど、宗教的価値観や教義に反する企業を投資対象から除外することから始まったとされる。
その後、第二次世界大戦後の米国で民主主義や人権、環境問題などの社会的意識が深化したことが現在のSRIにつながったという。その契機となったのが「キャンペーンGM」で、世界最大級の自動車会社GM(General Motors)社製自動車の欠陥問題から始まり、マイノリティの雇用問題、公害防止対策などの社会的責任を問う運動が展開された。そして、1980 年代にはアパルトヘイト制度に対する反対運動として広がり、南アフリカからの撤退を求める株主行動や、南アフリカで事業展開する企業に対して投資回避などが起こった。この反アパルトヘイト運動は、年金基金などが投資における社会的基準を設けることにもつながった。また、1971年には世界初のSRI投資信託であるパックス・ワールド・ファンドが設定されるなど、一般の投資家向けのSRI商品が発売された。SRIの裾野が広がったのである。
1990 年代に入って、SRIは拡大期を迎えた。1992年にブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(地球サミット)が開催されるなど、地球環境問題への意識の高まりを受けて、環境問題の解決に向けた投資が増加した。また、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)の概念の普及に伴い、CSRを基準に企業を評価する動きが広がった。SRI拡大の背景にあるのが、国連の責任投資原則(PRI)である。E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)から成るESG課題が投資パフォーマンスに影響を与える可能性があるとの前提のもと、投資家は受託者責任の範囲内でESG課題を考慮するべきとの整理が行われた。このPRIが機関投資家によるSRIを後押し、特に欧米を中心にSRIの拡大がみられた。
(2012年10月1日掲載)
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