GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング

~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載

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サマリー

日本政府が2024年2月に発行したGX経済移行債は、世界初となる政府部門によるトランジションボンドである。GX経済移行債は今後10年間で20兆円程度発行される予定だ。2050年カーボンニュートラル実現のため、150兆円を超える投資が必要とされ、20兆円はその先行投資支援に使われる。今後の注目点は、先行投資支援を通じて生じるインパクト(温室効果ガス排出量の削減等)のレポーティングである。日本は石炭火力発電の全廃時期を明示していないことなどから、カーボンニュートラルの実現可能性に疑念の声もある。疑念を払拭するためにはインパクトレポートを通じた丁寧な情報発信が欠かせない。またGX経済移行債の円滑な発行のためには、投資家とのエンゲージメントを深めていくことが必要であり、インパクトレポートはその基礎資料として重要な意味を持つと考えられる。海外政府によるグリーン国債の発行およびそのインパクトレポートの公表事例は多いが、トランジションに特化したインパクトレポートの事例はない。成果が出るまでに時間を要する研究開発事業も少なからず含まれることから、打ち出し方に工夫が求められる。

大和総研調査季報 2024年夏季号Vol.55

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。

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