2022年11月24日
サマリー
◆本稿では、TOPIX500採用会社のうち、任意開示書類(統合報告書、サステナビリティレポートなど)を発行している企業(439社)の2022年9月末時点におけるTCFDに沿った情報開示の状況を整理し、今後の開示に向けて得られた示唆について述べる。特に、TCFDで開示が求められる、気候変動に関する「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」のうち、「指標と目標」にフォーカスする。
◆「指標と目標」については、GHG排出量、特にScope1、2について指標として開示(362社)し、目標として掲げている企業(Scope1:293社、Scope2:292社)が多く見られた。Scope3についても、少なくとも指標としてその排出量の把握を進めている企業(277社)は多い。その他にも、例えば再生可能エネルギーを指標(128社)や目標(111社)として用いている企業が見受けられた。
◆今後、有価証券報告書でサステナビリティ情報の開示が求められる。指標・目標として何を用いるかは各企業によって異なるが、本稿における調査結果や同業他社の指標、国際的な基準などを参考に、自社の気候関連リスク・機会やその対応をモニタリングするために適切な指標・目標を用いるべきだろう。指標・目標について、社内の各部署に落とし込んで理解を深め、企業が一体となって気候変動への取り組みを進めるとともに、投資家に指標・目標を開示、説明し、その意味や進捗を共有することが重要であると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
TCFDに沿った情報開示の状況(ガバナンス、リスク管理)
TOPIX500採用会社の任意開示書類での気候変動に関する情報開示
2022年11月04日
-
TCFDに沿った情報開示の状況(戦略)
TOPIX500採用会社の任意開示書類での気候変動に関する情報開示
2022年11月11日
-
開示府令改正案の概要と今後の展望
有価証券報告書におけるサステナビリティ、コーポレートガバナンスに関する情報開示の拡充
2022年11月10日
-
企業の気候変動情報の開示に関する国際的な基準案が公表
ISSBの公開草案についてQ&A形式で解説②
2022年04月22日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
大手生保は中長期の事業環境の変化に対応できるか
~本格化するビジネスモデル変革~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
企業価値向上に向けて上場会社に高まるプレッシャー
『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
長期デフレからの本当の出口
『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
複眼的思考へのヒント
2024年04月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日