ダイバーシティと投資パフォーマンス(1)

~管理職や部長職への女性の登用状況は株式投資指標として有効か~

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2019年02月25日

  • 伊藤 正晴

サマリー

◆女性の登用に関する指標として管理職女性比率と部長職女性比率に着目し、その水準や変化、さらには業種平均との差やその変化を用いて企業をグループ分けし、2014年から2018年の5年間の株式リターンを計測した。

◆単に女性を登用しているだけではなく、登用を積極的に行っている企業群の等金額リターンや時価総額加重リターンが高いケースが多いことがわかった。ただ、時価総額加重リターンはほとんどのケースで配当込みTOPIXのリターンを大きく上回った年と大きく下回った年が混在している。女性を管理職等に登用している企業群への投資の期待リターンは高いのであるが、リスクも高いことがうかがえる。

◆2018年は配当込みTOPIXが-16.0%と市場が大きく下げた中、女性を積極的に登用している企業群のリターンはマイナス幅が小さいケースが多い。女性の登用という情報を用いることで、市場下落時にポートフォリオのリターンの低下を軽減する効果が期待できる可能性がある。

◆管理職と部長職では、部長職の方が登用の状況の違いでリターンの差が大きい傾向がうかがえる。管理職の中でも上位に位置する部長職は業務に与える影響が大きいと考えられ、これが企業価値の創出などを通じてリターンに影響している可能性があろう。また、5年間保有を続けた場合と直近の女性の登用の情報を用いて1年ごとにリバランスした場合は、後者のリターンの方が高いケースが多い。常に最新の情報を反映させてリバランスすることが妥当であることを示すのではないか。

◆以上の結果は、管理職や部長職における女性登用の状況とリターンには何らかの関係が存在し、投資指標として有効であることの可能性を示唆している。ただ、投資指標の候補として検討する価値は十分にあろうが、指標そのものの使い方の工夫、他の指標との組み合わせ、異なった期間での動向など、さらなる分析を進めることが課題である。

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