COP21に向けた地球温暖化対策(その2)

急がれる国内の環境・エネルギー政策のとりまとめ

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2015年07月15日

  • 大澤 秀一

サマリー

◆我が国の地球温暖化対策の中心は、GHG排出量の約9割を占めるエネルギー起源CO2排出量の排出削減策であるが、2013年度の同CO2排出量は、発電に占める火力発電の比率が震災後から8割を大きく超えたことで過去最悪となった。これに伴い、火力発電の燃料費の増加は電気料金の上昇につながっており、環境と経済の両面で悪影響を及ぼしている。課題解決にすみやかに取り組む必要があるが、現在は、安倍総理の指示で進められている、環境・エネルギー政策の見直し作業の進捗を待っている状態である。


◆2015年6月、2030年度に向けた「長期エネルギー需給見通し(案)」の公表に続き、同見通しに基づいて、COP21に向けて必要となる「約束草案(政府原案)」が相次いで公表された。自給率(安定供給)は震災前を上回る水準(概ね25%程度)、電力コスト(経済効率性)は現状よりも低い水準、削減目標(環境適合)は欧米に遜色ない水準、を同時に達成するためのエネルギーミックスが示された。エネルギーミックスと整合的なものとなる削減目標は、2030年度に2013年度比▲26.0%とされた。削減率に加え、野心度と公平性も欧米と遜色のないものとされる。


◆両案が正式決定されれば、火力発電によるエネルギー起源CO2の増加に歯止めがかかると期待され、また、「地球温暖化対策計画」の策定にも取り掛かれることになる。ただし、同計画の実現可能性を高めていくには、省エネを実現するためのコストや、コスト負担の経済影響について分析しておく必要がある。また、電力コストの引き下げと省エネの両立は簡単なことではないため、環境投資にインセンティブを与えるための新たな政策議論が必要となる可能性もある。


◆課題は多いが、政府は、国内の環境・エネルギー政策をできるだけ早期にとりまとめ、COP21で決まる、2020年以降の新たな国際枠組みの構築に向けた議論をリードしたい考えだ。

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